建設業のAI活用事例16選|現状や導入メリットをわかりやすく解説

「人手不足が深刻で、工期に間に合わせるのが大変だ…」 「熟練の職人が引退していく一方で、若手への技術継承が進まない…」 「もっと現場の安全性を高めて、事故を未然に防ぎたい…」
建設業界でプロジェクトを管理するあなたなら、このような課題に日々頭を悩ませているのではないでしょうか。深刻化する人手不足、高騰する人件費、そして厳格化する安全管理。これらの課題を解決する切り札として、今、「AI(人工知能)」に大きな注目が集まっています。
この記事では、建設業におけるAI活用について、以下の点を網羅的に解説します。
- 建設業でAIが求められる背景と現状
- AI導入によって得られる具体的なメリット
- 設計、施工管理、安全管理など業務別のAI活用事例16選
- AI導入を成功させるためのポイント
AIに関する専門知識がない方でも理解できるよう、具体的な事例を交えながらわかりやすく説明します。自社でのAI導入を検討する第一歩として、ぜひ最後までご覧ください。

目次
建設業におけるAI活用の現状
建設業界では、AI技術の導入が急速に進みつつあります。これまで人の経験や勘に頼っていた業務をAIが代替・支援することで、生産性や安全性を劇的に向上させる可能性を秘めているからです。
特に、2024年4月から建設業にも適用された時間外労働の上限規制(通称:2024年問題)は、業界全体の働き方改革を待ったなしの状況にしています。限られたリソースでこれまで以上の成果を出すために、AIの活用はもはや選択肢の一つではなく、持続的な経営に不可欠な要素となりつつあるのです。
しかし、弊社で開催したAIセミナーには全国からAIに対する意識の高い建設会社が集まりましたが、実際にAIを活用している参加者はごくわずかであり、ほとんどの方が「ChatGPTすら使ったことがない」という結果でした。現在、建設業界でAIを取り入れている企業の多くは、大手ゼネコンが独自に開発したAIシステムを導入しているケースが中心であり、地場ゼネコンや中小規模の建設会社ではまだまだ普及していないのが実情です。
建設業でAIが求められる背景
なぜ今、これほどまでに建設業でAIが求められているのでしょうか。その背景には、業界特有の根深い課題と、AI技術の進化があります。
建設業でのAI活用の位置づけ
建設業は、長年にわたり以下の3つの大きな課題を抱えてきました。
- 深刻な人手不足と高齢化:若年層の入職者が減少する一方で、就業者の高齢化が進行。労働力の確保が困難になっています。
- 熟練技術の継承問題:ベテラン職人が持つ高度な技術やノウハウ(暗黙知)が、若手に十分に継承されず、失われつつあります。
- 労働災害のリスク:高所作業や重機の操作など、危険を伴う作業が多く、労働災害のリスクが他産業に比べて高い傾向にあります。
これらの課題に対し、AIは非常に有効な解決策となり得ます。例えば、AIによる業務自動化は人手不足を補い、熟練者の動きをデータ化・分析することで技術継承をサポートします。また、AIカメラによる危険予知は、現場の安全性を飛躍的に高めることができます。AIは、建設業が抱える構造的な課題を解決するための強力なツールとして位置づけられているのです。
他業界と比較した建設業のAI活用状況
製造業や金融業などと比較すると、建設業におけるAIの活用はまだ発展途上の段階にあると言えます。その理由として、屋外かつ非定型な作業が多いこと、IT投資に消極的な企業が少なくないことなどが挙げられます。
しかし、裏を返せば、それだけ大きな「伸びしろ」があるということです。国土交通省が推進する「i-Construction」のように、国を挙げたDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の動きも活発化しており、今後、建設業界のAI活用は一気に加速していくと予測されています。
他産業の事例を建設業にどう活かすかが、今後の重要な課題となります。現在は無料のAIセミナーも数多く開催されているので、他産業でのAI活用事例を実際に聞いてみることもお勧めです。
国が推進するAI導入の取り組み
建設業界の生産性向上は、国の重要課題でもあります。国土交通省は、ICT(情報通信技術)を全面的に活用して建設生産システム全体の生産性向上を目指す「i-Construction(アイ・コンストラクション)」を推進しています。
この取り組みの中核となるのが、3次元モデルを活用する「BIM/CIM(ビム/シム)」です。2023年度からは、小規模なものを除くすべての公共工事でBIM/CIMの原則適用が開始されました。
BIM/CIMで作成された3次元データは、AIと非常に相性が良いという特徴があります。例えば、AIがBIM/CIMデータを解析して最適な施工手順を自動で計画したり、必要な資材の量を正確に算出したりすることが可能です。
このように、国が主導して業界全体のデジタル化を進めていることも、AI導入の追い風となっています。
建設業でAIを導入するメリット
AIを導入することで、建設業は具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。ここでは、代表的な6つのメリットを解説します。
生産性の向上と工期短縮
AIは、これまで人間が行っていた単純作業やデータ処理を自動化・高速化します。例えば、AIが膨大な過去の工事データから最適な工程を計画したり、ドローンで撮影した現場写真から進捗状況を自動で管理したりすることで、プロジェクト全体の生産性が向上し、工期の短縮につながります。
品質の均一化と精度向上
AIによる画像認識技術を使えば、コンクリートのひび割れや鉄筋の配置ミスなどを、人間の目よりも高精度かつ客観的に検出できます。これにより、検査員のスキルによる品質のばらつきがなくなり、建物や構造物の品質を均一に保つことが可能になります。
人手不足の解消と省力化
建設機械の自動運転や、遠隔操作ロボットの導入は、現場作業員の負担を大幅に軽減します。これにより、少ない人数でも効率的に工事を進めることができ、深刻な人手不足の解消に貢献します。また、危険な作業をロボットに任せることで、現場の省力化も実現します。
安全性の向上と労働災害の防止
AI搭載の監視カメラは、建設現場の映像をリアルタイムで解析し、作業員の危険行動(ヘルメットの未着用など)や、重機と人の接近、危険エリアへの侵入などを自動で検知します。事故につながる可能性のある事象を瞬時に警告することで、労働災害を未然に防ぎ、現場の安全性を飛躍的に高めます。
熟練技術の継承問題解決
熟練技術者が持つ高度な技術や判断基準を、AIに学習させることができます。例えば、溶接や左官といった手作業の動きをセンサーでデータ化し、AIが解析することで、その技術を可視化・標準化します。これにより、若手技術者への教育や技術指導が効率化され、属人化していた技術の継承がスムーズに進みます。
コスト削減と経営効率の向上
上記のメリットは、最終的にコスト削減と経営効率の向上に直結します。工期短縮は人件費や経費の削減につながり、品質向上は手戻りや補修コストを削減します。また、労働災害の防止は、企業の信頼性維持や保険料の抑制にも貢献します。AIの活用は、企業の競争力を高めるための重要な経営戦略と言えるでしょう。
建設業で活用されているAI技術の種類
一口に「AI」と言っても、その技術は様々です。ここでは、建設業で特に活用されている代表的な5つのAI技術をわかりやすく解説します。
画像認識AI
画像認識AIとは、画像や映像に映っているものが何かを識別する技術です。建設現場では、ドローンで撮影した空撮写真から工事の進捗状況を把握したり、コンクリート表面の画像からひび割れの有無や幅を自動で検出したりするのに活用されています。
予測AI(機械学習・データ分析)
予測AIとは、過去の膨大なデータを分析(機械学習)し、未来に起こることを予測する技術です。天候データや過去の工程実績から工事の遅延リスクを予測したり、建機の稼働データから故障の予兆を検知したりするなど、計画の最適化やリスク管理に役立ちます。
生成AI(文章・図面生成)
生成AI(ジェネレーティブAI)とは、文章や画像、設計図など、新しいコンテンツを自動で作り出す技術です。建築設計の分野では、建物の条件(面積、階数、デザインの方向性など)を入力するだけで、AIが複数のデザイン案を自動生成するといった活用が進んでいます。日報や報告書の自動作成にも応用が期待されています。
音声認識AI
音声認識AIとは、人の話す声をテキストデータに変換する技術です。現場で両手がふさがっている状態でも、音声で指示を出して議事録を作成したり、検査結果を報告書として自動でまとめたりすることができます。現場の作業効率を大きく向上させる技術です。
自動運転・ロボティクスAI
自動運転・ロボティクスAIとは、AIが周囲の状況を判断し、機械やロボットを自律的に動かす技術です。建設現場では、ブルドーザーやローラーなどの建設機械を自動で運転させたり、資材運搬ロボットが自律的に現場内を移動したりする活用事例があります。
建設業向けAIツール:Avete
より建設業務に特化したAIツールとして、「Avete」のようなサービスも登場しています。
Aveteは、建設業に特化した生成AIプラットフォームで、若手の教育支援や工事写真からの配筋検査帳票の自動生成など、現場のニーズに合わせた機能を提供しています。専門用語や業界の慣習を学習しているため、汎用AIよりも精度の高いアウトプットが期待できるのが特徴です。
(参考:株式会社Arent Avete公式サイト)
建設業のAI活用事例16選
それでは、実際にAIが建設業の各業務でどのように活用されているのか、具体的な事例を16個見ていきましょう。
施工管理でのAI活用事例
進捗管理の自動化
ドローンで定期的に現場全体を撮影し、その画像をAIが解析。設計図(BIM/CIMデータ)と比較することで、工事の進捗率を自動で算出します。これにより、管理者は事務所にいながら正確な進捗状況をリアルタイムで把握でき、迅速な意思決定が可能になります。
出来形管理の効率化
レーザースキャナーやスマートフォンで計測した3次元点群データをAIが解析し、設計データとの差分を自動で検出・帳票化します。従来、複数人で行っていた出来形測量の時間と手間を大幅に削減し、検査の精度も向上させます。
工程遅延の予測
過去の類似工事のデータ、天候情報、現在の進捗状況などをAIが分析し、将来の工程遅延リスクを予測します。遅延の可能性が高い箇所を事前に特定できるため、早めに対策を講じ、手戻りを防ぐことができます。
安全管理でのAI活用事例
危険行動のリアルタイム検知
現場に設置したAIカメラが、作業員の映像を常に監視。ヘルメットや安全帯の未着用、重機への不用意な接近といった危険な行動を検知すると、即座に現場の管理者や本人にアラートで通知します。大手ゼネコンの鹿島建設などでも、同様のシステムが導入され、事故防止に成果を上げています。
ヒヤリハットの予測分析
過去のヒヤリハット報告や事故データをAIに学習させ、特定の作業場所や時間帯、天候条件など、事故が発生しやすいパターンを分析・予測します。これにより、重点的に安全パトロールを行うなど、効果的な対策を立てることができます。
作業員の体調・動線モニタリング
ウェアラブルデバイスを作業員が身につけることで、心拍数や体温などのバイタルデータを収集します。AIがこれらのデータを解析し、熱中症の兆候や体調不良を早期に検知します。また、GPSによる動線分析で、非効率な動きや危険な場所への立ち入りがないかを管理することも可能です。
危険エリアへの侵入検知
重機が稼働しているエリアや、開口部周辺など、あらかじめ設定した危険エリアに作業員が侵入すると、AIカメラが検知して警報を発します。人と重機の接触事故や、墜落・転落事故を防ぐのに非常に有効です。
品質管理でのAI活用事例
ひび割れ・欠陥の自動検出
橋梁やトンネルなどのコンクリート構造物を撮影した画像から、AIが0.1mm単位の微細なひび割れや剥離などの変状を自動で検出します。これにより、点検作業の効率と精度が飛躍的に向上し、インフラの長寿命化に貢献します。
コンクリート品質の自動判定
打設されたコンクリートの画像をAIが分析し、ジャンカ(充填不良)やコールドジョイントといった品質に関わる欠陥を自動で判定します。これにより、目視検査のばらつきをなくし、客観的な品質評価が可能になります。
施工不良の早期発見
壁紙の浮きや床材の傷、設備の設置ミスなど、内装仕上げの検査においてもAIは活用されています。AIが図面と現場写真を照合し、施工不良や仕様との相違点を自動でリストアップすることで、手戻りを減らし、品質を確保します。
重機・設備でのAI活用事例
建設機械の自動運転
GPSやセンサー、AIを搭載したブルドーザーやロードローラーが、設計データに基づいて無人で土工作業や締固め作業を行います。オペレーター不足を解消するとともに、夜間でも安全に作業を進めることができ、工期短縮に大きく貢献します。
稼働データ分析による最適化
各建設機械に取り付けたセンサーから稼働時間、燃料消費量、位置情報などのデータを収集します。AIがこれらのビッグデータを分析し、非効率な車両の動きや待機時間を可視化します。これにより、最適な車両配置や燃料効率の良い運転方法を導き出し、コスト削減につなげます。
故障予兆検知
建機のエンジン音や振動、油圧などのデータをAIが常時監視し、平常時とは異なるパターンを検知することで、本格的な故障が発生する前にその予兆を捉えます。これにより、突然のダウンタイムを防ぎ、計画的なメンテナンスが可能になります。
設計・積算でのAI活用事例
図面の自動読み取り
PDFや紙の図面をAI-OCR(光学的文字認識)技術で読み取り、必要な情報を自動でデジタルデータ化します。これにより、手作業によるデータ入力の手間が省け、積算業務や施工計画の作成が効率化されます。
積算作業の自動化
BIM/CIMデータや図面データから、AIが壁の面積や配管の長さなどを自動で算出し、必要な資材の数量を拾い出します。膨大な時間がかかっていた積算業務を大幅に自動化し、担当者の負担を軽減するとともに、算出ミスを防ぎます。
BIMデータとの連携
生成AIを活用し、「2LDKで日当たりの良いリビング」といった自然言語の指示から、条件に合った建築デザインの3Dモデル(BIMデータ)を複数パターン自動生成する技術開発が進んでいます。これにより、設計の初期段階における合意形成を迅速化し、プロジェクトをスムーズにスタートさせることができます。
建設業でAI導入を成功させるポイント
多くのメリットがあるAIですが、ただ導入すれば成功するわけではありません。ここでは、導入を成功させるための4つの重要なポイントを解説します。
小規模導入から始める
いきなり全社的に大規模なシステムを導入するのは、リスクが高く、現場の混乱を招きかねません。まずは、特定の部署や特定の課題に絞って「スモールスタート」を切ることが重要です。例えば、「配筋検査の効率化」という課題に対して、一部の現場でAIツールを試験的に導入し、効果を検証(PoC:概念実証)してみましょう。
現場の課題に合ったツールを選ぶ
AI導入を成功させるには、「何のためにAIを使うのか」という目的を明確にすることが不可欠です。「AIが流行っているから」という理由で導入するのではなく、「安全管理を徹底したい」「積算業務の負担を減らしたい」といった、現場が抱える具体的な課題を解決できるツールを選びましょう。
デジタル人材の育成と教育
AIツールを導入しても、現場の作業員や管理者が使いこなせなければ意味がありません。ツールの使い方に関する研修会を実施したり、社内でデジタル技術に詳しい人材を育成したりするなど、全社的な教育体制を整えることが重要です。ベンダー(ツール提供会社)のサポート体制が充実しているかどうかも、選定の際の重要なポイントになります。
既存業務との連携を意識する
導入するAIツールが、既存の業務フローや他のシステムとスムーズに連携できるかを確認しましょう。AIを特別なものとして孤立させるのではなく、日々の業務の中に自然に組み込むことで、定着しやすくなり、より大きな効果を発揮します。
建設業のAI導入に関するよくある質問
最後に、AI導入を検討する際によく寄せられる質問にお答えします。
中小企業でもAIは導入できますか?
はい、導入できます。 かつてAI導入には多額の初期投資が必要でしたが、現在は月額数万円から利用できるクラウド型のAIサービス(SaaS)が数多く登場しています。特に、特定の業務に特化したツールであれば、比較的手軽に導入が可能です。まずは自社の課題解決に直結する小規模なツールから試してみることをお勧めします。
AI導入の費用相場はどれくらいですか?
費用は、目的や規模によって大きく異なります。 前述の通り、特定の業務を効率化するSaaSであれば月額数万円〜数十万円が一般的です。一方で、自社独自の課題に合わせてAIシステムをオーダーメイドで開発(カスタム開発)する場合は、数百万円から数千万円以上の費用がかかることもあります。まずはスモールスタートで効果を検証し、投資対効果を見極めながら段階的に拡大していくのが賢明です。
AI専門の社員がいなくても使えますか?
はい、使えます。 最近のAIツールの多くは、プログラミングなどの専門知識がなくても、直感的な操作で利用できるように設計されています。また、多くのベンダーが導入支援や操作トレーニング、運用サポートなどを提供しています。自社にAIの専門家がいなくても、ベンダーと協力しながら活用を進めることが可能です。
ただし、AI導入で最も多く聞かれるのが「何から始めていいのかわからない」という声です。また、建設業では国の工事など機密性の高い情報を扱うことが多いため、工事情報などを安易にAIに入力することにはリスクが伴います。そのため、建設業に特化したAI活用支援を受けながら、安心して最初の一歩を踏み出すのも有効な方法です。

まとめ
本記事では、建設業におけるAI活用の現状から、具体的なメリット、16の活用事例、そして導入を成功させるためのポイントまでを網羅的に解説しました。
建設業界が直面する人手不足、技術継承、安全性向上といった根深い課題に対し、AIは極めて有効な解決策となります。AIはもはや遠い未来の技術ではなく、日々の業務を効率化し、企業の競争力を高めるための身近なツールです。
この記事を読んで、「自社のあの業務にもAIが使えるかもしれない」と感じた方も多いのではないでしょうか。
AI導入の第一歩は、自社の課題を洗い出し、どの業務を効率化したいのかを明確にすることです。ぜひ本記事を参考に、あなたの会社でもAI活用の検討を始めてみてください。







