建設業のAI導入で起こるデメリットとは?原因と対策を徹底解説

2026.02.20
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「建設業界の人手不足は深刻だ…」「競合はDXを進めているが、うちは何から手をつければいいのか…」 建設業の経営者やDX担当者の方で、このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。解決策の一つとして注目されるのが、ChatGPTをはじめとする生成AI(人工知能)の活用です。しかし、導入にはメリットだけでなく、見過ごせないデメリットも存在します。

実際に、当社が2026年1〜2月に開催したAIセミナー参加者120名へのアンケートでも、「AIが出した情報の正確性やセキュリティへの懸念」を挙げた方が44.2%、「適切な指示(プロンプト)を出すスキルの不足」を挙げた方が61.7%にのぼるなど、導入への不安の声は決して少なくありません。

AI導入の失敗を避け、自社の生産性向上につなげるためには、事前にデメリットと対策を正しく理解しておくことが不可欠です。

この記事では、建設業における生成AI導入の具体的なデメリットと、それを乗り越えるための対策を専門家の視点から分かりやすく解説します。メリットや活用事例も交えながら、AI導入を成功させるための道筋を示しますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

建設業でAI導入が進む背景

建設業でChatGPTなどの生成AIの導入や建設DX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進んでいる背景には、業界が抱える構造的な課題と、それを解決しようとする社会的な動きがあります。

人手不足の深刻化

国土交通省資料

建設業界では、就業者の高齢化と若手入職者の減少による深刻な人手不足が続いています。国土交通省のデータによると、建設技能者の約3分の1が55歳以上であり、次世代への技術継承が大きな課題です。(参考:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」)

この状況を打開し、少ない人数でも高い生産性を維持するために、生成AIによる事務作業の効率化やノウハウのデータ化への期待が高まっています

国のDX推進

国も建設業界の変革を後押ししています。国土交通省は、ICT技術を全面的に活用して生産性向上を目指す「i-Construction(アイ・コンストラクション)」を推進しており、その一環としてAI技術の活用を奨励しています。

補助金や助成金制度も整備されつつあり、企業がAI導入に踏み出しやすい環境が整ってきているのです。

現場の生産性向上ニーズ

2024年4月から建設業にも適用された「働き方改革関連法」により、時間外労働の上限規制が厳格化されました。限られた時間の中で従来と同等、あるいはそれ以上の成果を出すためには、業務プロセスの抜本的な見直しが不可欠です。

ChatGPTなどの生成AIを活用して書類作成や情報整理の時間を短縮し、現場の生産性を向上させることは、もはや避けては通れない経営課題となっています。

生成AIとは?建設業での位置づけ

生成AIとは、ChatGPTやGemini、Claudeなどに代表される、テキスト・画像・コードなどを自動で生成できるAI技術のことです。ユーザーが質問や指示(プロンプト)を入力すると、大量のデータから学習したパターンをもとに、自然な文章や回答を返してくれます。

建設業では、このテキスト生成能力を活かして書類作成・情報検索・ナレッジ共有などの事務作業を効率化する用途で注目されています。画像認識AIやロボット制御AIなどの「特化型AI」とは異なり、幅広い業務で「人の知的作業を補助するツール」として活躍できるのが生成AIの特徴です。

生成AIで効率化できる建設業の仕事

生成AIが得意なのは「人間の知的作業を補助すること」です。危険な現場作業を代替するのではなく、事務所での書類作業や情報処理を大幅に効率化し、人間はより創造的で高度な判断が求められる業務に集中できるようになります。建設業において生成AIが活躍する主な業務を見ていきましょう。

  • 書類作成・報告書の下書き作成 ChatGPTなどの生成AIに、日報・週報・施工報告書・議事録などの下書きを作成させることができます。箇条書きのメモや音声データを渡すだけで、定型フォーマットに沿った文章を瞬時に生成できるため、書類作成にかかる時間を大幅に削減できます。
  • 積算・見積書作成の補助 過去の見積データや仕様書をもとに、生成AIが積算の下書きや項目の洗い出しを補助します。抜け漏れの確認にも活用でき、ベテラン社員が不在でも一定の精度で見積書を作成するサポートが可能です。
  • 法規・基準の調査・要約 建設業法や建築基準法、各種ガイドラインなど、膨大な法規情報を生成AIに質問形式で調べさせることができます。「この工事に必要な届出は?」「〇〇基準の改正ポイントは?」といった質問に、要点をまとめた回答を得られるため、調査時間を短縮できます(ただし、最終確認は必ず人間が行う必要があります)。
  • 技術ノウハウの整理・マニュアル化 熟練職人が持つ「勘」や「経験」に基づく暗黙知を、インタビューや過去の記録をもとに生成AIが文章として整理・マニュアル化できます。これにより、技術継承をドキュメントとして残すことが可能になります。
  • 社内問い合わせ対応の自動化 社内規程や過去のFAQを学習させた生成AIチャットボットを導入すれば、「この場合の申請手順は?」「安全書類のテンプレートはどこ?」といった社内問い合わせに自動対応でき、管理部門の負担を軽減できます。
  • メール・文書の翻訳・多言語対応 外国人技能実習生の増加に伴い、安全教育資料やマニュアルの多言語化ニーズが高まっています。生成AIは高精度な翻訳を瞬時に行えるため、コミュニケーションの円滑化に役立ちます。

建設業の生成AI導入のメリット

生成AI導入は、建設業が抱える多くの課題を解決するポテンシャルを秘めています。ここでは、代表的な5つのメリットをご紹介します。

書類作成・事務作業の時間を大幅にカットできる

日報、施工報告書、議事録、安全書類など、建設業は紙仕事が非常に多い業種です。ChatGPTなどの生成AIを活用すれば、メモや箇条書きを渡すだけで文章の下書きを瞬時に作成できます。ある事例では、書類作成にかかる時間が50〜80%削減されたという報告もあります。現場から事務所に戻った後の残業時間を減らし、コア業務に集中できるようになります。

法令・基準の調査スピードが格段に上がる

建設業法、建築基準法、労働安全衛生法など、建設業に関わる法令やガイドラインは膨大です。生成AIに質問すれば、該当する条文やポイントを要約して回答してくれるため、専門書やWebを何時間もかけて調べる必要がなくなります。ただし、AIの回答には誤りが含まれる可能性があるため、最終確認は必ず人間が行うことが前提です。

熟練職人のノウハウをデータ化し、技術継承に活かせる

これまで「勘」や「経験」に頼ってきた熟練職人の技術や判断基準を、生成AIを使ってインタビュー記録から文章化・マニュアル化できます。この「暗黙知」をドキュメントとして残し、若手技術者への教育に活用することで、スムーズな技術継承を促進できます。

社内のナレッジ共有・問い合わせ対応が効率化する

過去の施工事例や社内規程を学習させたAIチャットボットを導入すれば、「この場合どうすればいい?」という現場からの問い合わせに即座に回答できます。ベテラン社員に頼りきりだったナレッジ共有が仕組み化され、属人化の解消にもつながります。

少人数でも事務所業務を回せる体制をつくれる

生成AIによる事務作業の効率化が進めば、少ない管理部門の人数でもこれまでと同等の業務をこなせるようになります。人手不足という根本的な課題に対して、「人を増やす」のではなく「一人あたりの生産性を上げる」というアプローチで対応できるのが、生成AI活用の大きなメリットです。

建設業の生成AI導入のデメリット・懸念点

生成AI導入には慎重に検討すべきデメリットやリスクも存在します。当社が2026年1〜2月に実施したAIセミナー参加者120名へのアンケートでも、導入にあたっての障壁として多くの懸念が寄せられました。ここでは、アンケート結果も交えながら、特に注意すべき7つのポイントを解説します。

生成AIの回答が不正確なことがある(ハルシネーション)

生成AI最大のリスクとも言えるのが、「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」です。ChatGPTなどの生成AIは、事実と異なる内容をあたかも正しいかのように自信を持って回答することがあります。

当社アンケートでも、「AIが出した情報の正確性やセキュリティへの懸念」を44.2%の方が障壁として挙げています。

このリスクは決して想像上のものではありません。2023年には、米国ニューヨーク州の弁護士がChatGPTを使って訴訟資料を作成したところ、引用した6件の判例がすべて実在しないものだったことが発覚し、裁判所から5,000ドル(約72万円)の罰金を命じられる事態となりました。(参考:日本経済新聞「ChatGPT生成の”存在しない判例”を使った米弁護士」

また、同年には米ジョージア州のラジオパーソナリティが、ChatGPTに「詐欺と横領を行った」と虚偽の内容を生成されたとして、OpenAIを名誉毀損で提訴しています。これはハルシネーションによる名誉毀損訴訟の初事例として注目を集めました。(参考:Forbes JAPAN

建設業法の条文を誤って引用したり、存在しない基準値を回答したりする可能性もあり、法令遵守が求められる建設業では特に注意が必要です。

機密情報・個人情報の漏洩リスクがある

ChatGPTなどの生成AIにプロンプト(指示文)として入力した情報は、サービスによってはAIの学習データとして利用される可能性があります。設計図面の情報、見積金額、顧客情報、従業員の個人情報などを安易に入力してしまうと、情報漏洩のリスクが生じます。

この問題を象徴する事例が、2023年に韓国Samsung(サムスン)で起きた情報漏洩事件です。同社がChatGPTの社内利用を許可したところ、わずか約20日間で3件の情報漏洩が発生しました。具体的には、半導体のソースコードをChatGPTに貼り付けてバグ修正を依頼したケースや、会議の録音データを投入して議事録作成を試みたケースなどがあり、同社は緊急措置としてプロンプト入力を1,024バイトに制限し、その後社内利用を原則禁止する事態に至りました。(参考:PC Watch「Samsung、ChatGPTの社内利用で3件の機密漏洩」2023年4月4日

「会議の録音をAIに投げて議事録を作る」という使い方は、建設業の現場でもやりがちなだけに、他人事ではありません。特に、無料版の生成AIサービスではこのリスクが高まるため、注意が必要です。

現場への定着に時間がかかる

新しいツールの導入には、現場からの抵抗がつきものです。「使い方が分からない」「結局自分で書いた方が早い」「今のやり方で十分だ」といった声が上がり、なかなか利用が浸透しないケースは少なくありません。

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当社アンケートでも、「社内AI文化の組織的定着」を障壁に挙げた方が53.3%と、2番目に多い結果でした。ツールを導入しただけでは意味がなく、組織として使い続ける文化を根付かせることの難しさが表れています。

特に、ITツールに不慣れな従業員が多い現場では、生成AIの活用法を理解してもらうまでに時間と粘り強い働きかけが必要です。

プロンプト(指示文)の質で出力の品質が大きく変わる

生成AIの出力品質は、ユーザーが入力するプロンプト(指示文)の内容に大きく左右されます。「いい感じに書いて」のような曖昧な指示では期待通りの結果が得られません。目的・背景・フォーマット・注意点などを具体的に指示する「プロンプトエンジニアリング」のスキルが必要であり、このスキルには個人差が出やすいという課題があります。

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当社アンケートでは、「適切な指示(プロンプト)を出すスキルの不足」が61.7%で最大の障壁として挙げられました。生成AIを導入しても、使いこなすスキルがなければ効果は限定的です。

ITリテラシーの格差で活用度に差が出る

従業員間のITスキルに差があると、「一部の人しか生成AIを使いこなせない」という状況に陥りがちです。若手社員はすぐに使いこなせても、ベテラン社員は敬遠してしまうケースもあります。

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当社アンケートでも、「会社全体や現場のITリテラシーのバラつき」を31.7%の方が障壁に挙げています。 結果として、AI導入の効果が限定的になったり、特定の従業員に業務負荷が偏ったりする可能性があります。

著作権・知的財産権の問題が生じうる

生成AIが作成した文章や画像には、学習元データの著作物が含まれている可能性があります。そのまま外部に公開したり、提案書に使用したりすると、意図せず著作権を侵害してしまうリスクがあります。

この問題について、文化庁は2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を公表し、生成AIと著作権の関係を整理しています。この文書では、AIの「開発・学習段階」と「生成・利用段階」を分けて考えるべきとされており、生成・利用段階では、通常の創作活動と同様に著作権法が適用されることが明確にされました。つまり、AI生成物が既存の著作物との「類似性」と「依拠性」の両方を満たす場合、著作権侵害となりうるということです。(参考:文化庁「AIと著作権に関する考え方について」令和6年3月15日

また、生成AIが出力したコンテンツの著作権が誰に帰属するのかについても、文化庁はプロンプトの内容や試行回数など人間の「創作的寄与」の程度で判断されるとしていますが、判例の蓄積はまだ少なく、法整備は途上にある状況です。

業務がAIに依存しすぎるリスクがある

生成AIに頼りすぎると、従業員自身の文章力や思考力、判断力が低下する恐れがあります。また、AIサービスの障害や仕様変更が発生した場合に業務が停止してしまう「ベンダーロックイン」のリスクもあります。AIはあくまで補助ツールであり、人間の能力を代替するものではないという意識が重要です。

建設業の生成AI導入でデメリットを防ぐための対策

ここからは、生成AI導入を失敗させないための6つの対策をご紹介します。

AIの出力は必ず人間がファクトチェックする

生成AIの回答を鵜呑みにせず、「AIが一次ドラフトを作り、人間が最終確認する」という運用フローを必ず構築しましょう。AIが生成した内容をそのまま使ってしまうと、重大な問題に発展しかねません。

特に法令・基準に関わる情報や数値データは、必ず原典にあたって正確性を確認することが重要です。生成AIはあくまで「下書きツール」であるという意識を社内に浸透させましょう。

機密情報の入力ルールを策定する

生成AIに入力してよい情報とNGな情報を明確にした社内ガイドラインを策定しましょう。設計図面の詳細、顧客の個人情報、未公開の見積金額などは入力禁止とするルールが基本です。

また、ChatGPTの企業向けプラン(ChatGPT Enterprise / Team)やAzure OpenAI Serviceなど、入力データが学習に利用されない設定がデフォルトで実装されているサービスを選定することも有効な対策です。OpenAIの公式ポリシーでは、API経由の入力データはモデルの学習に使用しないことが明記されています。

小規模導入(スモールスタート)でリスクを抑える

いきなり全社的に大規模な導入をするのではなく、まずは特定の部署や一部の業務に限定して生成AIを試してみる「スモールスタート」が有効です。当社アンケートでも「費用対効果がわからない」(28.3%)、「具体的にどの業務から手を付ければいいかの判断」(25.8%)が障壁として挙げられました。

例えば「まずは日報の下書き作成にChatGPTを使ってみる」など、小さな業務から始めることで、低コストで効果や課題を検証でき、本格導入に向けた知見を蓄積できます。

プロンプトのテンプレートを社内で共有する

効果的なプロンプトのテンプレート(ひな形)を作成し、社内で共有しましょう。「日報作成用」「議事録要約用」「法令調査用」など業務ごとのテンプレートを用意しておけば、ITスキルに関係なく誰でも一定の品質で生成AIを活用できるようになります。

現場スタッフへの教育・サポート体制を整える

生成AI導入の成功は、現場の協力なくしてあり得ません。導入前に丁寧な説明会を開き、導入の目的やメリットを共有することが大切です。「AIに仕事を奪われるのではなく、面倒な作業から解放される」というポジティブなメッセージを伝えましょう。また、操作マニュアルの整備や、気軽に質問できるサポート窓口を設けるなど、現場の不安を取り除くための体制を整えましょう。

生成AI利用の社内ガイドラインを整備する

機密情報の取り扱いだけでなく、著作権への配慮、出力内容のファクトチェック義務、利用可能な業務範囲など、生成AI利用に関する包括的な社内ガイドラインを整備しましょう。文化庁が公表した「AIと著作権に関する考え方について」や、同庁の「チェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月公表)も、ガイドライン策定の際の参考になります。ルールを明文化しておくことで、従業員が安心して生成AIを活用できる環境が整います。

まとめ|デメリットを理解すれば生成AI導入は成功しやすくなる

本記事では、建設業における生成AI(ChatGPTなど)導入のデメリットと、その対策について詳しく解説しました。

生成AI導入には、ハルシネーション(誤回答)のリスクや情報漏洩、現場への定着、著作権の問題など、確かに多くの課題や懸念点が存在します。当社のAIセミナー参加者へのアンケートでも、プロンプトスキルの不足(61.7%)や組織定着の難しさ(53.3%)など、多くの方が導入の障壁を感じていることが明らかになりました。

しかし、これらのデメリットは、事前に正しく理解し、適切な対策を講じることで乗り越えることが可能です。

重要なのは、AI導入そのものを目的にするのではなく、「生成AIというツールを使って、自社のどの業務を効率化したいのか」を明確にすることです。

人手不足、生産性向上、技術継承といった課題の解決に向けて、まずはスモールスタートで生成AI活用の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。この記事が、そのための羅針盤となれば幸いです。