現場DXとは?推進のメリット、事例を紹介

生産性向上・働き方改革 2025.07.08
現場DX記事の表紙

現場DXとは、製造業や建設現場、工場などの現場に最新のデジタル技術を導入して新しい価値を生み出すことを言います。現場DXの実現により、作業の効率化や人手不足の解消、生産性の向上など多くのメリットをもたらします。

ですが、実際に現場DXを導入する際にどのように進めていけばいいか分からないということもあるでしょう。そこでこの記事では、現場DXの概要について簡単に解説し、メリットや導入方法、成功のポイントなどを紹介します。もし現場DXの導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

現場DXとは

現場DX(現場デジタルトランスフォーメーション)とは、研究開発や建設現場、工場の現場において、デジタル技術や最新のICTを活用することで、働き方や業務のプロセスを抜本的に変革する取り組みのことを指しています。 

現場DXについての図解

現場DXの具体例

現場管理の効率化
従来アナログで行われていた情報共有や作業を、デジタル化・自動化し、一元管理やデータの可視化を可能にします。

業務の効率化・生産性の向上
IoTやAI、ロボット、ドローンなどの先端技術を活用し、業務の効率化や生産性の向上、安全の確保といった現場の課題の解決が可能になります。

現場DX推進のメリット

現場DXを取り入れることによって、様々なメリットがあります。
メリットとして以下の3つを紹介します。

  • 技術者や作業員不足の解消
  • 現場の業務効率向上
  • 安全性の向上

技術者や作業員不足の解消

現場DXを推進することは、技術者や作業員不足の解消につながります。
なぜなら、IoTやAI、ロボット、ドローンなどのデジタル技術を活用し、現場作業の自動化や効率化を進めることで、技術者や作業員の不足を補うことができるからです。

人材不足を解消する具体例は以下の通りです。

人材不足を解消する具体例
  • 業務のデジタル化による効率化
  • 作業の自動化・省人化
  • 遠隔操作・リモート支援

業務のデジタル化による効率化
アナログで行っていた作業をデジタル化することで、データを一元管理します。これにより、手戻りや作業のミスを減らすことが可能になり、少人数でも高い生産性の維持が実現できます。また、クラウド型管理システムの導入で、現場の進捗状況や図面のリアルタイム共有も容易に行えます。

作業の自動化・省人化
自動化設備やICT建機、ロボットなどを導入することで、今まで複数人で対応していた重労働や作業を少人数でこなすことが可能になります。
具体例として建設現場では、ドローンによる測量検査やクラウドカメラによる現場の進捗確認、施工方法の指示を遠隔から実施するなどの作業の自動化・省人化が進んでいます。

遠隔操作・リモート支援
IoTや5Gを活用し、現場に管理者がいなくても遠隔から指示や決定をすることが可能になります。これにより、熟練技術者が複数の現場を同時にサポートすることができ、現場での人手不足を補うことが期待できます。

以上のことより現場DXを進めていくことで、技術者や作業員不足という課題を解決することが可能になります。

現場の業務効率向上

現場DXを進めることで現場の業務効率向上が期待できます。
なぜなら、デジタル技術を活用することで、今まで手作業で行っていたことが自動化され、手間の削減やミスの防止、コストの削減を実現できるからです。

現場の業務効率向上の具体例は以下の通りです。

グループウェアやスマートグラスを用いた作業の可視化
標準化されたプロセスで新人の作業員でも高精度の作業が可能になります。人的ミスの軽減と作業精度の向上が期待できます。

遠隔地から熟練者による作業支援やAIを活用した技能の伝承
特定作業員への依存を低減することができ、組織全体の生産性を標準化することが可能になります。

建設現場でのドローンの測量やICT建機による自動施工
自動化可能なタスクを機械化することで、人的リソースを戦略業務へ集中することができ、労働時間の削減と自動化の推進が可能になります。

以上のことから、現場DXでは、デジタル技術の活用により現場の業務効率を向上することが可能です。

安全性の向上

製造業や建設業において現場DXを進めることは、安全性の向上にもつながります。
なぜなら、ドローンやIoTなどのデジタル技術を活用することで、遠隔での作業やリアルタイムでの監視が可能になり、いち早く危険に気づくことができるからです。

安全性向上の具体例は以下の通りです。

ドローンによる点検や測量
高所作業や作業員の立ち入ることができない危険な点検や測量などをドローンの活用により作業を無人化し事故を防止します。

BIM/CIMによる施工シミュレーション
3Dモデルで構造物や地中埋設管などの可視化を行います。施工前のリスク検証や新人教育を強化し、怪我や事故の低減につなげています。

IoTセンサー搭載の重機
ブルドーザーやバックホーなどの稼働データを常に監視することで、部品の異常を早期発見し、機械の故障に起因する事故の防止が可能になります。

遠隔監視システム
現場作業員にカメラを設置しベテラン技術者が映像をリアルタイムで確認します。作業手順の誤りを即座に修正し、ヒューマンエラーを低減することにつなげることが期待できます。

以上のことにより、現場DXを進めることで、安全性の向上が期待されています。これらの技術を組み合わせることによってより安全性を高めることができます。

現場DXの導入方法

ここからは、現場DXの導入方法について解説します。
現場DXの導入は以下の手順で進めていきます。

現場DX導入手順
  1. 現場の課題を明確化する
  2. ツールの選定
  3. テスト導入
  4. 運用方法の共有
  5. 現場の声を反映する

現場の課題を明確化する

現場DXを進めていくためにまず、現場の課題を明確化することが大切です。
なぜなら、現場の課題を把握することで、現場のニーズに合ったソリューションの選定が可能になり、目的と手段の混同を防ぐことができるからです。

例えば、現場ごとに、抱える業務プロセスや課題は異なります。しかし、課題を明確にすることで、現場のニーズや実態に合ったデジタルツールやシステムを選定することが可能になり、現場での定着や効果を高めることができます。

この他、DX導入のツールを入れること自体が目的になってしまうと、現場で求められる業務改善や効果につながらず、期待した成果を得ることができません。しかし、「どんな効果を狙うのか」「何を解決したいのか」現場の課題を明確にすることで、適切な手段を選択することができます。

このことから現場の課題を明確化することはDXを進める第一歩として非常に重要です。

ツールの選定

現場の課題を明確にしたら、現場の課題解消につながるツールを選定しましょう。
現場DXにおいてツールの選定は、導入効果を最大化するために必要なプロセスだからです。
現場DXのツールの具体例は以下の通りです。

フォトラクション
BIMデータの共有や写真・図面管理、クラウド連携を行い、現場とオフィス間の情報共有を高速化することができます。

ドローン
進捗確認や高所点検、安全確保を行い、現場作業の効率化や安全性の向上が期待できます。

デジタル現場帳票
タブレットやスマートフォンで帳票記録を行い、業務報告や点検の効率化を図ります。

動画マニュアル作成
作業や安全確保などの手順や注意事項を動画で作成し、新人教育や手順伝達に役立ちます。

現場DXツールを選定する際は、「現場スタッフが使いこなせるのか」「現場の課題を解決できるのか」「拡張性やコストは適切か」などを考慮して、実際の業務フローや従業員のスキルにあったものを選ぶようにしましょう。

テスト導入

現場DXのテスト導入とは、本格的に全社で展開を行う前に、限定的な部門や範囲で新しいデジタル技術やシステムを試験的に導入することです。テスト導入することで、課題や効果を事前に検証できます。

テスト導入の流れは以下の通りです。

1.テストの計画を立てる
導入するツールやシステム、担当者、スケジュールを決定します。

2.テストの運用を開始
現場で実際にシステムを使用してもらい、操作方法のトレーニングやマニュアルを用意して現場の熟練度を高めます。

3.テスト期間中に、問題点や利用状況を確認
問題点や利用状況を確認し、洗い出してからまた改善・検討を行い、必要に応じたシステムや運用方法の調節を行います。

テスト導入で十分な効果が得られた場合は、段階的に全社・全行程へ展開を行い、効果が不十分である場合は、再度改善を行い、テストを繰り返し行います。

現場DXのテスト導入は、小さく始め、課題と効果を見極めを行い、段階的に拡大することが重要です。現場での実際の状態に基づいた計画と、現場の理解を得るための丁寧な運用を行いましょう。

運用方法の共有

現場作業員にツールの運用方法の共有を必ず行いましょう。
新しいツールを取り入れても使いこなせなければうまく行きません。作業員がツールを使いこなせるようにサポートしましょう。

ツール運用時サポート手順

運用方法の共有
ツールの使い方だけでなく、DXの導入によるメリットや目的を作業員に伝えます。

研修、サポート体制
導入時には勉強会や研修を行う場を設け、ツールが使いこなせるようにサポートを行います。

情報共有のデジタル化
タスク管理ツールやチャット、グループウェアなどを活用することで、ノウハウや現場の情報をリアルタイムで共有・蓄積させます。

運用中に課題や問題点がないか作業員にヒアリングを行い、改善を続けていきましょう。

現場の声を反映する

現場DXを成功させるためには、現場で働く作業員やスタッフの声を積極的に取り入れましょう。
現場の声を反映するステップは以下の通りです。

1.現場ヒアリングの実施
定期的にアンケートやヒアリングを行い、課題や改善点を集めます。

2.現場作業員のプロジェクト参画
ツールの選定やシステム設計の段階から現場作業員をプロジェクトメンバーに加え、実用性があるのか、使いやすさが適切なのかなどを徹底的に追求します。

3.課題の可視化と優先順位付け
集めた現場の声を基に、整理を行い、どの課題を優先的に解決するのかを現場作業員と話し合い、決めていきます。

4.小さな成功体験の積み重ね
まずは小規模な改善から始めるようにして、徐々に範囲を広げていきましょう。

5.現場主導の改善提案制度の活用
現場からの提案をデジタルで集約します。AIなどで分析・評価することで実際の改善に活かす仕組みを作ることができます。

6.現場の声が反映される信頼関係の構築
現場作業員に「自分たちの声が反映されている」と実感を持たせることで、現場作業員や関係者から更なる協力を得ることができ、定着率を高めることにつながります。

現場DX成功のポイント

次に、現場DXの成功のポイントについて解説していきます。
現場DXの成功のポイントとして、以下の3つが主に挙げられています。

  • 目的を共有する
  • 経営層と現場の連携
  • 継続的な改善

目的を共有する

現場DXを成功させるためには、DXのゴールや目的を明確に設定し、組織全体で共有することが必要です。なぜなら、目的があいまいな状態だと現場の協力や納得感を得ることができず、形だけでの導入で終わってしまうリスクがあるからです。

経営層による全体向けの説明や各部署向けの説明会、社内報での情報発信など、様々な手段を活用してビジョンや目的を周知し、徹底していきましょう。

また、システムやツールの運用方法だけでなく、DXを行う理由や背景、DXを導入するメリットも現場に伝えることが大切です。

経営層と現場の連携

現場DXでは、経営層だけでなく現場のニーズや課題を的確に把握することで、現実的な施策につなげるといった、経営層と現場の連携が必要になります。

経営層と現場がミーティングやワークショップを定期的に行うことで、双方のコミュニケーションを確立できます。また、現場のフィードバックを経営戦略に反映させることにもつながります。

経営層が現場の声に耳を傾けることで、現場の実情に合った意思決定を行うことが可能になり、現場の自発的な協力や納得感を得られます。

継続的な改善

現場DXを導入したことがゴールになってはいけません。継続的に現場での運用状況のモニタリングを行い、定期的なフィードバックや評価をもとに改善を行いましょう。

小さな成功体験を積み重ね、現場の士気を高めていくことで、長期的な視点でDXを進めていくようにしましょう。現場スタッフのフィードバックを活用し、新技術の追加導入やシステム操作の向上など、現場目線での改善活動を繰り返していくことでDXの価値を高めることが期待できます。

【業種別】現場DXの事例を紹介

次に製造業と建設業のDX事例について紹介していきます。

製造業(製造・工場)のDX事例

トヨタ自動車では「工場IoT」を導入することで、生産現場のデジタル化を進めています。トヨタの工場では、生産現場の各種データや3DCADデータの一元管理を行い、部署間や工場で、情報共有できるIoTプラットホームを構築しています。これにより現場主導の小規模プロジェクトやFA機器からのデータ活用を積み重ねることで、費用対効果を最大化しています。また、現有資産の有効活用やデータ分析の効率化も実現されています。

建設業(建設・建築・工事)のDX事例

清水建設では、AR技術を活用して施工管理を支援する「Shimz AR Eye」を開発しています。携帯タブレットを使用し、端末上で建物のBIMデータとリアルタイムのライブ映像を見える化することで、施工中の建物躯体や設備配管などの施工管理を支援できます。

施工管理の現場では、躯体や設備配管において、施工管理における図面照合作業が、現場作業員にとって大きな負担となっていました。「Shimz AR Eye」を活用することで、リアルタイムの映像とBIMの情報が、タブレットを任意の方向に向けると合成表示されます。これにより設備配管の照合が容易になり、現場での負担が軽減されることにつながります。

現場DXにおすすめツール

次に、現場DXにおすすめのツールを3つ紹介します。

現場DXにおすすめのツール3つ
  • IoTセンサー
  • 動画マニュアル
  • デジタル帳簿

IoTセンサー

IoTセンサーは、現場の状況や設備をリアルタイムでデータ化し、自動化や遠隔監視を実現するためのものです。

具体例として、製品や設備にIoTセンサーを取り付けることで生産現場のデータを分析・収集し、業務の効率化や改善を図ることができます。また、工場や建設現場で、IoTセンサーを使用することで、機械の位置や作業員、稼働状況、環境データなどをリアルタイムで把握を行い、最適な作業計画や安全管理などに役立ちます。

動画マニュアル

動画マニュアルとは、従来のテキストや紙によるマニュアルを動画形式に置き換えたものです。動画マニュアルを活用すれば、現場教育の効率化や業務の標準化、ノウハウの伝承・共有が効果的に行えます

動画マニュアルのメリットとして、時間・場所を問わず学習が可能、生産性の向上・教育コストの削減、低コストで導入可能などがあり、現場の事情と合わせることができ、人材教育や、現場力の底上げに大きな効果が期待できます。

デジタル帳簿

デジタル帳簿とは、電子データとして一元管理・活用するもののことです。これまで紙で記録類や現場帳票は管理されていましたが、これをデジタル化することで、手書きの記入ミスや紛失リスクを減らし、業務の効率化やコスト削減を実現することができます。デジタル帳簿は特に建設業や製造業などで多く導入が進んでいます。

デジタル帳簿の主なメリットは、業務の効率化やデータの即時活用・可視化、コストの削減です。
このように現場DXのデジタル帳簿は、紙の非効率化を脱却することができ、現場業務の効率化に期待できます。

まとめ

今回の記事では、現場DXの概要について簡単な説明を行い、現場DXを導入した際のメリットや導入方法などについて解説しました。

建設業では、現在人手不足という大きな課題に直面しています。そこで、現場DXを導入することは、生産性の向上や働き方といった点で大きく改善が期待されています。
皆さんも現場DXの導入を小さなところからでいいので進めることで、少しでも職場環境の改善に役立てればと思います。