ISO9001認証取得の流れや方法、難易度についてわかりやすく解説!

ISO 2025.06.02

ISO9001認証を取得しようと考えているけれど、「どんな流れで進めるのか」「取得にはどれくらいの労力がかかるのか」と、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

ISO9001は、企業の品質管理や顧客満足度を向上させるための国際規格であり、多くの企業が取得を目指しています

しかし、そのプロセスには、規格の理解や書類作成、審査対応など、初めての方には難しく感じる部分もあります。この記事では、ISO9001認証取得の流れや方法を初心者にもわかりやすく解説し、気になる取得難易度についても詳しくお伝えしていきます。

ISO9001認証取得の流れ【構築・運用・審査】

ISO9001認証取得の流れは大まかに【構築】⇒【運用】⇒【審査】の順番で行います。
各段階での実施事項は以下の通りです。これらのプロセスを順調に進めていくことで、効率的にISO9001の認証取得が可能となります。

構築
※は準備段階のもの
1. 取得するISO規格を決める
2. ISOを取得したい適用範囲を決める
3. ※認証支援をコンサルティング業者に依頼するかどうかを決める
4. ※審査機関(認証機関)を決める
5. ISO担当者を決める
6. 規格要求事項を満たすようにマネジメントシステムを構築する
運用 1. マネジメントシステムを運用する(PDCAサイクルの実施)
2. 内部監査とマネジメントレビューを実施する
審査 1. 初回一次審査
》》一次審査で懸案事項があれば二次審査までに対応
2. 初回二次審査
》》二次審査で不適合があれば即日対応
認証取得

構築

  1. 取得するISO規格を決める
    ISO9001は品質マネジメントシステム(QMS)に関する国際規格ですが、ISOには他にも環境マネジメントシステム(ISO14001)や労働安全衛生マネジメントシステム(ISO45001)など多くの規格があります。

    まず、どの規格の認証を取得したいのかを決めましょう。例えば、製品やサービスの品質や顧客満足を向上させたい場合はISO9001が適しています。規格の選択が目的に合ったものであるか、経営層や関係者で話し合うことが大切です。

  2. ISOを取得したい適用範囲を決める
    適用範囲とは、ISO規格を適用する業務や製品、サービスの範囲を意味します。例えば、全社的に取得するのか、特定の事業部門や工場のみ適用するのかを決めます。

    また、適用範囲は審査の工数や顧客要求事項(入札の加点など)に影響する可能性もあるため、注意深く設定することが必要です。

  3. 認証支援をコンサルティング業者に依頼するかどうかを決める
    ISO認証の取得には規格要求事項の理解が必要不可欠です。そのため、認証支援を行うコンサルタントに依頼するかどうかを検討する企業も多くあります。コンサルタントを活用すれば効率的に準備を進められますが、その分コストがかかります。

    一方、自社で対応する場合、できるだけ低いコストでの取得が可能ですが、時間と労力が増大する可能性があります。審査機関に審査申し込みを行う前に、コンサルタントを活用するのか決定するようにしましょう。

  4. 審査機関(認証機関)を決める
    審査機関は、ISO規格への適合を審査し、認証を発行する機関です。審査機関によって審査のスタイルや費用、得意とする業界が異なるため、自社に適した機関を選ぶ必要があります。取得スケジュールを確認し、適用範囲や事業の規模に合った審査機関を選びましょう。

  5. ISO担当者を決める
    ISO認証取得の準備を進めるには、社内で担当者を決める必要があります。この担当者は、プロジェクト全体の管理や規格の理解、社内の取りまとめを行います。

    担当者は組織の業務全体やISO規格に関する知識を持つ人が適しており、必要に応じてISO研修を受けさせることも検討しなければなりません。適切な担当者が選ばれ、権限と責任が明確にされていることで、ISO取得プロセスがスムーズに進むでしょう。

  6. 規格要求事項を満たすようにマネジメントシステムを構築する
    ISO9001取得のためには、規格で求められる要件を満たすために、自社の業務に合わせたマネジメントシステムを構築する必要があります。

    これには、顧客満足度を高めるためのプロセスの設計や文書化、リスクと機会の特定や評価、内部監査の仕組みづくりが含まれます。システムは運用しやすく、実際の業務に役立つものであることが理想です。このステップを丁寧に行うことで、実用性の高い仕組みが作れます。

運用

  1. マネジメントシステムを運用する
    ISO9001のマネジメントシステムを構築したら、実際に運用を開始します。運用とはPDCAサイクルを回すこと、つまり決めた手順やルールに基づいて業務を行い、改善を進めていくことです。

    例えば、製品の品質を確保するために標準化された作業手順書に従ったり、顧客からのフィードバックを記録して改善活動に繋げたりします。また、日々の運用で発生した問題点や課題を洗い出し、改善していくことも重要です。

  2. 内部監査とマネジメントレビューを実施する
    内部監査とは、ISO9001で構築したマネジメントシステムが正しく運用されているかを社内で確認するプロセスです。また、内部監査では、各部門を対象にヒアリングや文書記録類の確認を行い、規格要求事項への適合性を確認していきます。

    マネジメントレビューは、いわゆる社長への報告会であり、経営層がシステム全体を評価し、必要な改善を指示する場です。これらは組織の品質マネジメントの有効性を維持・向上させる重要な手段であり、定期的に実施することが求められます。

審査

  1. 初回一次審査
    初回一次審査は、審査機関が企業のマネジメントシステムを文書や計画に基づいて確認するプロセスです。

    審査員は、システムがISO9001の要求事項を満たしているか、また、実際に運用可能な状態であるかなど、整備状況を評価し、改善が必要な点があれば指摘します。一次審査で懸案事項があれば二次審査までに対応を行います。

  2. 初回二次審査
    初回二次審査は、実際の運用状況を確認する重要なプロセスです。一次審査で確認された文書や手順がルール通りに実施されているかを審査員が現地で評価します。

    具体的には品質管理や記録の保管が適切に実施されているか、必要に応じて改善されているかなどが対象です。この審査に合格すると、ISO9001の認証が発行されます。また、二次審査で不適合があればすぐに対応を行いましょう。不適合が適切に改善されたと確認がされない限り、認証書が発行されないので気をつけましょう。

ISO9001取得方法は自社かコンサルの2択!

ISO9001の認証を取得する方法は、大きく分けて2つの方法があります。それは、自社で準備を進める方法と、専門のコンサルタントに依頼する方法です。それぞれにメリットとデメリットがありますが、特に初めてISO9001を取得する場合、コンサルタントを利用することをお勧めします。以下ではその理由を詳しく解説します。

自社での取得準備のメリットと課題

自社でISO9001の取得準備を進める場合、最低限までコストを抑えられることが大きなメリットです。自社の従業員が主体となるため、外部への支出がほとんどありません。また、社内の業務プロセスを深く理解する機会ともなり、組織全体の改善意識を高めることができます。

しかし、この方法には大きな課題があります。ISO9001の規格は専門的で幅広い内容を含むため、正しく理解し、適切なマネジメントシステムを構築するには高い知識と経験が求められます。

特に、初めてISOを取得する企業では、どこから手を付ければ良いのか分からず、手探り状態になりがちです。さらに、審査機関とのやり取りや内部監査の準備にも多大な時間と労力が必要です。

コンサルタント利用のメリット

一方で、ISO9001の取得を専門のコンサルタントに依頼する場合、以下のようなメリットがあります。

  • 効率的な取得プロセス
    コンサルタントはISOの専門家であり、規格の要求事項を深く理解しています。これにより、企業の状況に応じた最適な計画を立て、迅速かつ効率的に取得準備を進めることが可能です。自社で行う場合に比べて、取得にかかる期間を大幅に短縮できるケースが多いです。
  • 確実性の向上
    審査において不適合が発生すると、再審査や追加の改善が必要になり、時間やコストが余計にかかります。コンサルタントは豊富な経験を基に、審査での不適合を最小限に抑えるサポートを行います。結果として、認証取得の成功率が高まります。
  • 社内負担の軽減
    コンサルタントに依頼することで、社内の従業員が本来の業務に集中できる環境を維持できます。内部監査や文書作成といった複雑な作業をコンサルタントが支援するため、担当者の負担が軽減され、ストレスを最小限に抑えられます。
  • アフターサポートの充実
    ISO認証取得後も、マネジメントシステムの維持・改善が求められます。多くのコンサルタントは、取得後のサポートも提供しており、内部監査の支援やシステムの改善に関するアドバイスを受けることが可能です。

初めてのISO取得にはコンサルが最適

自社運用にはコスト削減の魅力がありますが、初めてのISO取得には多くのハードルがあるのも事実です。

一方で、コンサルタントを利用すれば、効率的かつ確実に取得を進められるだけでなく、企業の負担を軽減することができます。特に、時間的制約がある企業や、ISOの知識が不足している場合には、コンサルタントの利用が最適です。

ISO9001の取得は、単に認証を得るだけでなく、企業全体の品質向上や顧客満足度の向上につながる重要なプロセスです。その成功のためにも、専門家の力を借りることを検討してみてはいかがでしょうか。

→ISO9001コンサルタントの詳しい解説については、次の記事を参照:ISO9001取得成功には外部コンサルタントがおすすめ!コンサル会社費用相場や支援内容まで解説

ISO9001取得にかかる費用は?

ISO9001の取得には、主に2つの費用がかかります。それは、審査費用コンサルタント費用です。それぞれの相場と内容について詳しく解説します。

ISO審査費用の相場

ISO審査費用は、審査機関が行う審査にかかる費用です。この費用は、企業の規模や業種、適用範囲によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。

中小企業の場合:年間30万~50万円程度

大企業の場合:年間50万~100万円以上

審査費用には、初回審査(一次審査・二次審査)の費用と、認証後の定期的な維持審査の費用が含まれます。初回審査の方が費用は高く、維持審査は比較的低額です。審査費用を抑えるためには、適用範囲を適切に設定することがポイントです。

ISOコンサルタント費用の相場

コンサルタント費用は、ISO取得に向けた支援を依頼する際に発生する費用です。この費用も企業の規模やコンサルタントのサービス内容によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。

中小企業の場合:50万~200万円程度

大企業の場合:100万~300万円以上

コンサルタント費用には、現状分析、マネジメントシステムの構築支援、内部監査の指導、審査対応サポートなどが含まれます。経験豊富かつ業界に精通しているコンサルタントを選ぶことで、効率的かつ確実な認証取得が可能となります。

→ISO9001取得費用の詳しい解説については、次の記事を参照:ISO9001の取得・維持費用はどれくらい?コンサル会社利用のパターンまで徹底解説!

ISO9001の自社運用は難しい?認証取得の難易度は?

ISO9001の認証取得を考える企業にとって、「自社での運用は可能か?」「取得は難しいのか?」という疑問が出てくるでしょう。以下では、自社運用が難しく感じる理由と、認証取得の実際の難易度について解説します。

ISOの自社運用が難しく感じる理由

ISO9001は、企業の品質マネジメントシステムを国際的な基準に合わせることを目的とした規格です。しかし、その運用を自社のみで進める場合、次のような課題が発生します。

  • 専門知識の不足
    ISO9001の規格は、要求事項が幅広いかつ解釈が難しいため、初心者にとっては難解です。適切に理解し実践するためには、外部のISO研修への参加や解説本などで読み解きが必要です。
  • 業務の負担増加
    認証取得のためには、通常業務に加えて、マネジメントシステムの構築や内部監査の準備を進める必要があります。これにより担当者の負担が増大し、他の業務に支障が出る可能性があります。
  • 審査対応の難しさ
    審査機関とのやり取りや審査での対応は、初めての企業にとって大きなストレスになります。また審査で不適合が出た場合、迅速な対応が必要となり、時間と労力が増加します。

これらの理由から、自社運用は「難しい」と感じられることが多いのです。

ISO認証取得は難易度が高いものではない

ISO9001認証取得そのものは、適切な準備と対応を行えば、決して難易度が高いものではありません。重要なのは、ISO9001の要求事項を過剰に難しく捉えず、企業の実態に合わせて柔軟に解釈し運用する姿勢です。

ISO9001の目的は、品質の一貫性を保ち、顧客満足を向上させることにあります。そのため、無理に新しい仕組みを導入する必要はなく、既存の業務プロセスをISO9001の基準に適合する形に調整するだけでも十分です。

また、現在では、中小企業向けの支援プログラムやコンサルタントのサービス内容も充実しています。専門家のサポートを受けることで、負担を軽減しながら認証取得に向けたプロセスを効率的に進めることが可能です。さらに、認証取得後も、運用の定着を目指して段階的に改善を進めることで、長期的な運用の安定化が図れます。

まとめ

ISO9001認証取得は、自社での運用やコンサルタントの活用を通じて進めることができ、構築・運用・審査の各ステップを経て達成されます。費用については審査費用やコンサル費用などが発生しますが、これらは企業の規模や運用体制によって異なります。

自社運用は難しく感じられることもありますが、実際には計画的に取り組むことで認証取得の難易度はそれほど高くありません。

この記事はISO9001取得成功に向けて、自社に適した方法を選択するための判断材料にすると良いでしょう。