ISO45001認証取得コンサルタントを選ぶ基準とは?費用についても解説!

ISO 2025.06.02

ISO45001は、労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格であり、職場の安全性を向上させ、従業員の健康を守るために多くの企業で注目されています。

認証取得には、規格要求事項への理解や適切な運用プロセスの構築が必要であるため、ISOに関して専門的な知識を持つコンサルタントは大きな役目を果たします。では、どのような基準でコンサルタントを選ぶと望む結果が得られるのでしょうか。

この記事では、ISO45001認証取得を目指す企業が、信頼できるコンサルタントを選ぶ際のポイントや費用相場について解説します。初めての認証取得を検討している方や、より効率的に認証取得を進めたい方にとって、とても有益な内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。

ISO45001とは?取得の必要性は?

ISO45001は「労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)」に関する国際規格です。

この規格は、働く人々の地位や権利についての見直しや、企業や組織の取るべき施策や仕組みづくりが問われていくなかで、2018年に発行された新しい規格です。

ISO45001は、入札や取引の有利性、労働環境への信頼性、企業のイメージアップ等に効果的であり、労働災害リスクが高い業界にとって必要性が高い規格と言えるでしょう。

現状の社会情勢では、若年労働者不足や従業員の高齢化が顕著になっており、労働者の健康増進や労働環境の改善へのニーズは高まっています。また、ベテラン従業員の定年により、労働安全衛生管理のノウハウが継承されず、組織における労働安全衛生レベルが低下する恐れもあります。

その改善策としてISO45001を導入することで、組織全体で労働安全衛生管理の方法やノウハウを体系化し、労働災害リスクの低減や快適な職場環境の提供につなげることができます。

また他にも、離職率の低下、従業員のモチベーション向上、企業イメージと信頼性の向上など様々なメリットをもたらします。

ISO45001を取得した方がいい業種とは

ISO45001は労働安全衛生マネジメントシステムに関する規格で、従業員が身体的・精神的に安全に働ける環境を整えることを目的としています。

特に、建設業や製造業産業廃棄物業では、取引先の要件として認証が求められたり、自治体の入札条件に入っていたりとISO45001を取得するメリットが大きいです。その傾向は、国内でのISO45001の取得状況を見ても明らかです。

《規格の種類別国内取得状況グラフをつける予定》《産業分類別グラフをつける予定》
参考資料:国際標準化機構WEBページ ISO調査2023の結果

ISO45001コンサルには指導型と代行型がある

ISO45001コンサルタントは、お客様をどのような形で支援するのかによって、形態が異なります。
主に『指導型コンサルタント』『代行型コンサルタント』の2種類に分けられるでしょう。

コンサルティング支援内容の違い

指導型コンサルタント

指導型コンサルタントとは、企業のISO担当者、従業員などに対して、内部監査員養成やISO実務セミナーなど、ISO45001認証を取得するための教育・指導を行います。

教育や指導が中心なので、ISOに関する実務(社内のプロセスの見直し、マネジメントシステムの構築・運用)は企業の担当者が実施します。

代行型コンサルタント

代行型コンサルタントとは、企業へヒアリングを行い、実情に合わせてISO45001認証の取得までのISOの構築や運用を代行支援します。

運用代行とは基本的に書類作成全般を指しますが、代行支援の範囲はコンサル会社によって異なります。

価格の違い

コンサルタントの種類 年間費用相場
指導型コンサルタント 45~150万円程度
代行型コンサルタント 45~200万円程度

ISOコンサルタントの費用は、会社の規模や業種、規格や審査の種類、コンサルティング方法などによって異なります。

相場では、指導型コンサルタントより代行型コンサルタントのほうが費用に幅があり、高く感じますが、実際には代行型コンサルタントの方が低価格の会社が多いです。

その理由は、指導型コンサルタントは企業の従業員に対して、ISO教育指導のために定期的な訪問、監査を行うため、一社にかかる時間が多くなり、その分費用も高くなりやすいためです。指導型コンサルタントは、ISOの考え方を社内に浸透させ、経営改善を目指す企業には適したコンサルタントです。

一方、代行型コンサルタントは企業から必要な情報を受け取り、ISO審査に必要な資料の作成やアドバイスを行います。打ち合わせ回数が1~3回ほどで済むコンサルタント会社もあるため、費用が安価な会社が多いです。認証取得までの時間に余裕が無かったり、社内での作業負担を最低限にしたいという企業におすすめです。

コンサル会社を選ぶ基準とは

ISO45001取得にあたりコンサルタントの利用を検討している企業は、以下の4つのポイントを基準に選定するとより満足度が高いコンサルティング支援を受けられるでしょう。

ISO45001コンサルを選ぶポイント

・顧客継続率

・認証したい業界での顧客実績

・認証の目的にあった支援

・認証を取得したい期日

顧客継続率

顧客継続率が高いということは、顧客満足度が高いことにつながります。顧客継続率は、認証を取得した後も見据えて付き合えるコンサル会社選びの参考になります。

顧客解約事由は、コンサルタントが原因ということもあれば、取得のメリットが無くなったため解約する企業もあります。よって、顧客継続率が100%のコンサル会社は、ほぼ存在しないのですが、目安としては、最も顧客継続率が高い会社から検討することをおすすめします。

認証したい業界での顧客実績

認証したい業界での顧客実績は、自社にマッチしたISO45001構築のためにも重要です。また、コンサル会社によって得意とする業界があります。業界への理解度は、現状の業務プロセスや運用書類の有効な活用に直結し、ISO関連の無駄な書類作成防止につながります。

認証の目的にあった支援

ISO45001の取得を検討する時に、「なぜ取得したいのか」「どのような効果を目的としているのか」を洗い出すことが重要です。例えば、入札加点のために形式的にISOを取得したいだけという企業にとっては、構築・運用代行支援を行うコンサル会社が最適でしょう。

ISO取得で組織体制の強化やコストダウンを図りたいのであれば、教育指導支援を行うコンサル会社が良いでしょう。

認証を取得したい期日

ISO45001を取得するためには、ある程度の準備期間が必要です。マネジメントシステムのPDCAサイクルを1周するのに、最低3ヵ月は見込んでおいた方が良いでしょう。そのサイクルの中には、内部監査とマネジメントレビューの実施も含んでいます。

準備期間を終えてからの審査受審になるため、その後認証書が届くまで1カ月は見ておいた方が無難です。ISO45001を取得したい期日から逆算して、余裕を持って準備に取り掛かるようにしましょう。

ISO45001の規格要求事項のポイント

ISO45001の規格要求事項は、他の規格にはない特有の項目や言葉があります。また、ISO45001の審査時にも労働安全衛生目線での特有の項目について重点的に見られるため、特に重要な以下の3つを抑えることがポイントです。

  • 危険源の特定と除去のためのリスク及び機会の評価や取り組み
  • 労働安全衛生関連の法令順守状況
  • インシデントの管理

→ISO45001要求事項の詳しい解説については、次の記事を参照:ISO45001:2018の要求事項とは?運用のポイントも含め分かりやすく解説

危険源の特定と除去のためのリスク及び機会の評価や取り組み

ISO45001の要求事項では、【6.1 リスク及び機会への取組み】にあたる内容です。

危険源の特定と除去のためのリスク及び機会の評価や取り組みに関しては、リスクアセスメントに基づく考え方が重要です。

以下の実施手順を参考に文書化するといいでしょう。

  1. 作業別に危険源(リスクの原因になるもの)やリスク(負傷や疾病)の洗い出し
  2. すでに実施している災害防止対策とその上でのリスク評価「発生する可能性×発生した時の重篤度」
  3. 追加のリスク低減措置案と措置後のリスク評価「発生する可能性×発生した時の重篤度」

『リスクアセスメント表』のテンプレートはWEB上で無料ダウンロードができるものもありますので、ぜひ参考にしてみてください。

労働安全衛生関連の法令順守状況

ISO45001の要求事項では、【6.1.3 法的要求事項及びその他の要求事項の決定】【6.1.4 取組みの計画策定】にあたる内容です。
以下の実施手順を参考に文書化するといいでしょう。

  1. 法令情報入手先の明確化(文書化必須ではない)
  2. 組織の危険源や労働安全衛生に関する法令を特定
  3. 2.で特定した法令の適用条件や実施内容、申請・届け出などの明確化
  4. 定期的に順守評価の実施

該当する法令を特定した後は、法令解説のWEBサイト(e-Gov法令検索)や解説本などで調べるといいでしょう。

インシデントの管理

ISO45001の要求事項では、【10.2 インシデント、不適合及び是正処置】にあたる内容です。
『インシデント』とは、発生した事故、ヒヤリハット的な事象、ヒヤリハットまでも行かないミスも含めた、問題事象のことです。
インシデントが発生した際は、以下の内容を考慮し、是正処置の必要性を判断するよう求められています。(記録に残すことが重要)

  1. 修正するための処置や起こった結果への対処(直ちに実施必須)
  2. インシデントの内容
  3. 発生原因
  4. 過去に同じようなインシデントが発生したことがあるか、または再発する可能性があるか

このようなインシデントの情報は関係者にも周知を行うことが重要です。

コンサル会社選びの失敗例

ISOコンサル会社選びの失敗例について2パターン紹介します。

【例1)構築だけコンサル会社にしてもらったが、運用方法が分からず、意味のないISOに…】
十分な準備期間が設けられず、比較もせずあるコンサル会社に依頼をしたら、構築だけして契約終了となった企業のケースがあります。

しかし、審査で指摘されている事や実際の運用がISOとどのように適応しているのかが分からず、運用方法も迷走状態になる可能性が高いです。運用に慣れるまではコンサルの手を借りて、ISOへの理解を深めましょう。

審査指摘の内容は、自社で改善するにあたって本当に重要な事なのかの区別ができるようになったら、自社運用を検討してみましょう。

【例2)業界知識が浅いコンサル会社に依頼したら、書類の量が多すぎて管理の負担が大きく…】
業界知識が浅いコンサルタントを利用するということは、ISOに関する余計な書類が増える可能性が高いです。

ISO45001の要求事項を満たすために、会社の運営に則しない資料を次々に押し付けるコンサル会社は実際に存在します。業界について深い理解があるコンサルタントに支援をしてもらうことで、現状満たされている要求事項と不足している要求事項の区別が的確にでき、企業の実情に沿ったISO45001の構築が可能となるのです。

業界専門のコンサル会社があれば、優先的に検討してみると良いでしょう。

コンサル会社選びを成功させ、最低限の工数でISO45001認証取得を実現するために

建設業や製造業などを中心に認証取得が行われているISO45001。コンサル会社選びを成功させるためには、ISO45001の取得における料金、工数、期間などの条件の整理と、コンサル会社への要望が満たせるのかを確認することが重要です。また、ISO45001認証を最低限の工数で取得するには、『代行型コンサルタント』がおすすめです。

業界によっては、企業競争力の強化目的で形式的なISO45001取得を検討している企業が多くあります。そのような企業にとっては、ISOに人員を割きたくない、書類をたくさん作りたくないなどの要望があるでしょう。

『代行型コンサルタント』は、必要な情報提供で書類作成や運用の一部を任せられるため、社内の工数削減に最適です。また、ISOの知識がなくても確実に認証取得ができるという大きなメリットがあります。

認証取得後も継続的にコンサル会社を利用する場合は、業界への理解や、対応力、人柄といったところも重要になってくるでしょう。複数のコンサル会社の見積もりを取って、コンサル会社に対してどのような要望があるかを事前に伝えておくと、ミスマッチの防止にもなりますのでおすすめです。

まとめ

ISO45001コンサルタントについて基本的な知識を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

ISOコンサルタントは料金も安くはないため、コンサルティング支援内容や実績を含めて、慎重にコンサル会社を選ぶことが重要です。

今後、長い付き合いになる会社かもしれないので、人柄や対応能力も考慮すると更に満足のいく結果を得られるでしょう。