ISO14001の更新審査とは?更新期間や現地審査で確認されるポイントを解説!

ISO 2025.06.02

ISO14001の更新審査(または再認証審査)とは、認証を維持し続けるために必要な3年間毎のISO審査を指します。

ISO認証の更新期間(有効期限)は3年間です。一度審査を受け認証を取得したからといって、永年続くものではありません。認証維持のため、更新審査を受け、認証期限を更新していく必要があります。

ISO9001やISO14001など、複数のISO認証を取得している場合は、それぞれの規格の更新期間(有効期限)に注意し、定期的に更新審査を受けなければなりません。

更新審査は、維持審査と違い初回登録時と同様にマネジメントシステム全体が審査されます。また、前回更新審査以降の変化点、監査の指摘に対する改善の状況も確認される為、初回登録審査時よりも確認事項は多くなります。

この記事では書類審査や現地審査での確認事項など、ISO14001の更新審査のポイントをまとめています。初心者から更新審査に向けて確実に準備をしたい方などに有益な内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。

ISO審査のサイクルとは

ISOの認証は「初回審査」⇒「維持審査」⇒「維持審査」⇒「更新審査」⇒「維持審査」…と定期的に審査を受ける事で認証が維持されます。

ISOの認証を初めて取得する際に「(初回)認証審査」を受審します。その約1年後に「維持審査」。さらにその翌年に「維持審査」を受審し、3年目に「更新審査」を受審します。「更新審査」を受審した後も、同様に1年毎に「維持審査」を受審し、有効期限が切れる前に「更新審査」を受審する事で、認証を延長し維持していきます。

ISOの有効期限は3年間の為、「更新審査」は3年以内に行い、認証期限を延長する必要があります。

更新審査の事前調査~認証更新までの流れについて

更新審査の流れは、審査機関(認証機関)により多少の違いはありますが、一例を紹介すると下記の通りです。

  1. 組織情報の確認
  2. 審査日程の確定
  3. 審査費用の支払い
  4. 審査資料の提出
  5. ISO審査受審
  6. 審査員による審査機関(認証機関)への報告
  7. 審査機関(認証機関)から認定機関への報告
  8. 認定機関よりISO認定
  9. 審査機関(認証機関)を通して各組織へISO認証取得の報告

「1.組織情報の確認」では、前回の審査から「組織名称」「住所」「登録サイト」「認証範囲」「人数」「取得を希望するISOの規格」に変更がないか、審査機関(認証機関)より確認の連絡があります。

上記の「組織情報」の内容により、審査見積や審査工数(審査日数)が決定されます。ISOの認証を受けたい拠点や認証範囲等を正しく審査機関(認証機関)へ報告しないと、認証が下りないケースもあるため注意しましょう。

また、「6.審査員による審査機関(認証機関)への報告」にISO審査での不適合が含まれる場合は、審査員から改善の確認を認められるまでは、この段階でストップしてしまいます。審査終了後に速やかに是正を行い更新期間(有効期限)が切れないようにしましょう。

ISO14001の更新期間(有効期限)とは?

ISO14001(環境マネジメントシステム)の更新期間(有効期限)は、他の規格(ISO9001:品質マネジメントシステムなど)と同じく3年間です。認証の継続を希望する場合、更新期間の約2ヶ月前には更新審査を受審し、認証期限を更新していく必要があります。

ISO14001の更新審査(再認証審査)とは

ISO14001の更新審査では、3年間の運用状況をとおして、ISO14001が適切に機能し、継続的に改善されているかを確認していきます。その上で認証を継続しても問題ないかを評価します。

3年間の運用状況の確認とは、「前回の認証(初回登録、または更新審査)から現在までの監査指摘事項」「不適合に対する改善状況の確認」「目標の達成状況の確認」が含まれます。よって、更新審査は必然的に維持審査よりも審査ボリュームは大きくなり、審査の負担は大きくなります。

下記に主な更新審査のポイントを紹介していますので、安心して審査を受審できるように、確認していきましょう。

更新審査で見られるポイント

 

更新審査で見られるポイントを以下の表にまとめています。

項目 詳細 ポイント
有効性 継続的改善 ・環境目標の達成に向けた取り組みと、PDCAサイクルに基づく改善が図られているか。
運用状況 ・ISO14001が適切に運用され、記録されているか。
・内部監査やマネジメントレビューが実施され、その結果が活用されているか。
パフォーマンス評価 ・環境パフォーマンスの監視・測定が適切に行われ、改善活動に繋がっているか。
適合性 法令遵守 ・環境関連法規制を遵守し、必要な許認可を取得・更新しているか。
過去3年間(前回更新審査以降)の審査指摘事項への対応 ・環境汚染事故など、環境に対する緊急事態発生時の対応準備が策定され、訓練などが実施されているか。
組織変更への対応 ・組織変更に伴い、ISO14001の適用範囲や運用方法が見直されているか。
リスク管理 リスクと機会への対応 ・環境側面に関するリスクと機会を特定し、適切な対応策が講じられているか。
緊急事態への備え ・環境汚染事故など、環境に対する緊急事態発生時の対応準備が策定され、訓練などが実施されているか。
利害関係者とのコミュニケーション ・適切なコミュニケーション活動が行われているか。
文書管理 ISO14001関連文書、記録の管理 ・ISO14001の関連文書が必要に応じて改訂され適切に管理されているか。記録の保管は定められた保存期間、適切な場所で保管されているか。

審査の準備としては、これらのポイントを踏まえ、関連資料を整理しておくことが重要です。

更新審査、維持審査にかかわらず、審査は原則的に現地で行われます。対象となる組織のメインサイト(マネジメントの主幹事業所)に審査員が訪問し、組織の代表者に現状についての話を聞いた上で各部門毎の審査を行います。

審査員は、実際に各部門を訪問し、実務を行っている現場を確認しながら各部門のISO担当者にヒアリングを行います。しかし、建設業のように事業所外での作業がメイン業務の部門の場合には、審査員が現場事務所を訪問し、現場責任者にヒアリングします。

この時にも「更新審査のポイント」で記述した内容はチェックされますので、組織で決定したルールに則って対応を行いましょう。

更新審査は、維持審査よりも負担が多く、ほとんどのISO管理者が審査までの準備に膨大な時間を費やしています。審査前に慌てて準備を行う事がないように、通常の業務内にISOを落し込み、業務との一体化ができるよう継続的に改善していきましょう。

審査当日の流れ

更新審査の場合、初回登録審査時と同様に、ISOの審査は2回行われます。

  • 第一段階審査(一次審査)
  • 第二段階審査(二次審査)

まず、第一段階審査について説明していきます。

第一段階審査は、ISOのマネジメントシステムの構築についての審査となり、主に文書審査と言われています。構築したマネジメントシステムが、ISO14001の規格に適合しているかが、審査のポイントとなります。

【第一段階審査の当日の流れの一例】

オープニング会議
審査員と会社側のメンバー紹介、審査の目的や基準、指摘区分の説明(不適合など)、範囲、スケジュールなどを確認します。

トップインタビュー
社長や取締役などの経営層が参加。過去1年の経営状況、外部・内部の課題と利害関係者からの期待、事業計画と達成状況、目標の達成状況などのヒアリングを行います。

文書審査
ISO14001の要求事項に基づき、文書や記録が適切かを審査します。
主に管理責任者が管理しているシステム文書の確認がメインになります。文書の最新版管理に基づき、関連する組織での対応状況も場合によっては同時に行われる事もあります。

現地審査
現場の状況を確認し、ISO14001のマネジメントシステムの運用状況や法規制の順守状況などを審査します。

クロージング会議
当日の審査結果の概要説明と、指摘事項があれば指摘が出されます。

もし、第一段階審査で指摘事項があった場合は、期限内に是正処置計画書を提出し、速やかに対応します。不適合の内容により、是正処置が完了していないと第二段階審査へ進めない事もありますので、クロージング会議で何に問題があったのかを明確にし、確実に対応を行いましょう。

次の第二段階審査は第一段階審査終了後、数週間後に実施されます。

【第二段階審査の当日の流れの一例】

オープニング会議
第一段階審査で不適合があった際は是正の確認、ほか当日のスケジュールを確認します。

各部門別審査
各部署の責任者や担当者に対して、業務における環境マネジメントシステムの運用状況を確認します。

審査結果まとめ
審査員が最終的な審査のまとめを行います。
この時は、審査員のみで行われますので組織の担当者は指定された時間まで待機する事になります。

クロージング会議
審査結果の総括と、指摘事項があれば指摘についての報告を受けます。
ここで問題なく認証が継続できるか、指摘事項に対しての是正について説明が行われます。

第一段階審査と同様に指摘事項があった場合は、期限内に是正処置計画書を提出し、速やかに対応します。不適合の内容により、是正処置が完了しないと認証の継続が認められない場合もあります。クロージング会議の内容を理解し確実に対応を行いましょう。

【書類編】審査員がチェックするポイントと質問例

下記は、審査員がチェックするポイント12項目と質問についての一例です。

【審査員がチェックするポイント】

  • 規格要求事項の理解と文書化
    ISO14001の要求事項を正しく理解し、文書化しているか。
  • 環境方針
    組織の活動に適合し、汚染予防や継続的改善へのコミットメントを示す環境方針を定めているか。
  • 役割、責任、権限
    ISO14001に関する役割と責任を明確化し、担当者に適切な権限を与えているか。
  • 環境側面の特定と評価
    組織の活動、製品、サービスが環境に与える影響(環境側面)を特定し、重要度に応じて評価しているか。
  • 法的要求事項
    組織に適用される環境関連の法律・規制を把握し、遵守しているか。
  • 目標
    環境方針に基づき、具体的かつ測定可能な環境目標を設定し、達成に向けた計画を策定しているか。
  • 資源
    ISO14001に必要な資源(人材、資金、設備など)を明確化し、提供しているか。
  • 運用管理
    環境側面に係る運用を管理する手順を確立し、文書化しているか。緊急事態への準備と対応は万全か。
  • 監視・測定
    環境パフォーマンスを監視・測定する指標と方法を定め、記録・分析しているか。
  • 不適合の管理
    問題発生時の是正処置を行い、再発防止に取り組んでいるか。
  • 内部監査
    ISO14001の適合性と有効性を定期的に評価する内部監査を実施しているか。
  • マネジメントレビュー
    ISO14001の継続的な適合性・妥当性・有効性をトップマネジメントがレビューしているか。

審査員は、上記のポイントを踏まえつつ、以下のような質問を通して、組織のISO14001への取り組み状況を具体的に確認します。

【審査での質問例】
  • 環境方針はどのように作成され、従業員にどのように周知されていますか?
  • 環境側面を特定・評価する際にどのような手法を用い、環境影響をどのように評価していますか?
  • 法令遵守はどのように確認し、最新情報はどのように入手していますか?
  • 環境目標はどのように設定され、進捗状況はどのように管理し、評価していますか?
  • 環境リスクや緊急事態への対応はどのように計画・管理していますか?
  • 内部監査やマネジメントレビューで、どのような課題や改善点が見つかり、どのように対応しましたか?
  • 従業員への環境教育はどのように実施され、その有効性はどのように評価していますか?
  • 利害関係者からの問い合わせには、どのように対応していますか?
  • 環境パフォーマンスに関する情報は、どのように公開していますか?

これらのポイントと質問例を参考に、ISO14001の要求事項を満たす環境マネジメントシステムを構築し、運用状況を整理・文書化を行い、審査に備えることが重要です。

【現場編】審査員がチェックするポイントと質問例

事業所外(施工現場など)の審査の際は、下記の内容がポイントになります。

【審査員がチェックするポイント】
  • 環境目標を認識しているか。
  • 環境リスクを把握し、予防、低減する為の対策を行っているか。
  • そのパフォーマンスを監視、測定し分析を行っているか。
  • 内外のコミュニケーションについて、対応、改善が必要な事はないか。
  • 法的要求事項を把握し、遵守しているか。
  • 不適合の発生はないか。発生した場合の処置の状況はどうか。

審査員は、上記のポイントを踏まえつつ、以下のような質問を通して、組織のISO14001への取り組み状況を具体的に確認します。

【審査での質問例】
  • この現場の目標を教えてください。
  • この現場の環境上のリスクは何ですか?どのような対応を行っていますか?
  • 住宅街の中での工事ですが、騒音や振動などは計測していますか?
  • 環境上の不適合や周辺の民家からのクレーム等はありませんか?

事業所外での審査の場合、必要な書類が手元にない等のアクシデントも発生します。事前に質問を想定して準備を行うようにしましょう。

ISO14001の更新審査と維持審査の違いとは

更新審査は「再認証審査」とも言い換えられるとおり、すでにISO認証を取得している組織が、認証の有効期限を更新するために受ける審査のことです。

この更新審査でISOの認証が認められると、有効期限が延長され、新しい認証書が発行されます。

更新審査ではマネジメントシステムがしっかりと回っている証拠として、前回更新審査以降(3年間)の下記の内容についても確認されます。

  • 指摘事項への対応状況の確認
  • 目標の達成状況の確認
  • 不適合や是正処置に対する改善状況
  • マネジメントレビューでの改善指示の状況

前回認証時(初回、または更新)以降の3年分の記録を用意しておきましょう。

維持審査は、構築されている仕組みが維持、運用できているか、運用についての確認がメインの審査となります。そのため、必然的に更新審査より審査工数が少なくなり、審査の負担も少なく感じるでしょう。

更新審査と維持審査の費用について

更新審査の費用は、審査機関、企業規模、事業内容、審査員の人数、審査日数、訪問回数などによって大きく異なります。さらに維持審査より確認事項が多く、審査工数が多くなるため、必然的に更新審査の年は審査費用が高くなります。

審査の頻度と費用の目安表

審査種別 頻度 費用
維持審査 更新審査の間に最低2回(1年毎)必要 10万円~30万円程度
更新審査 3年に1回必要 15万円~90万円程度

また上記の費用に追加して、ISOの登録料や審査員の宿泊費、交通費がかかる場合もあります。

審査機関(認証機関)により諸経費にも差がありますので、審査費用の相場を知るためには、複数の審査機関から見積を取り、自社の規模や事業内容にあった審査機関を選ぶようにしましょう。

ISO14001の更新審査で落ちる(認証更新できない)可能性はある?

ISO14001の更新審査で落ちる可能性はゼロではありません。審査で「不適合」が指摘され、そのまま放置し何もアクションを起こさなかった場合は、認証が切れる(=ISO審査に落ちる)可能性があります。

ISOの審査では、「不適合」が出たとしても、すぐに「不合格」になるわけではありません。審査後、検出された「不適合」に対して、決められた対応期間内に「是正処置」を行うことで、認証が継続されます。

「不適合」の重篤度にもよりますが、審査後30~90日程度の猶予期間が与えられます。この期間内に「是正処置」を行い、審査員に報告し、その是正が有効であると確認されれば、ISOの認証が継続して認められます。

「不適合」は指摘事項の中でも、ISO14001の規格要求事項に適応していない事項の事を指します。
「クロージング会議」にて、審査の結果として指摘事項についての報告が行われます。何が問題であったのか、またどのようにすればISO14001に適合するか、報告の中にポイントがありますので、この内容をもとに組織内で必要な対応策を検討し、仕組みに反映させましょう。

重要なのは更新審査を単なる認証維持の機会と捉えるのではなく、ISO14001の有効性を高め、組織の環境パフォーマンス向上に繋げることなのです。

まとめ

更新審査について説明を行ってきましたが、維持審査より準備が多く、大変そうだと感じた方もいるかもしれません。また、人材不足のなか、作業効率化が求められている状況で、ISO審査は組織にとって負担と感じる企業も少なくありません。

ですが、ISO14001の認証を継続する事で以下のようなメリットが享受できます。

  • 環境パフォーマンスとコスト削減
  • 法令順守とリスク管理
  • 従業員意識の向上と業務効率化
  • 企業イメージと市場競争力の向上
  • 持続可能性とグローバル展開の支援

これらのメリットにより、ISO14001の認証は企業の環境経営の向上、コスト削減、社会的評価の向上などに大きな効果をもたらす可能性があります。

ISOを長く継続していく為には、ISOの負担を軽減する事が重要です。組織にあったマネジメントシステムを構築する為にも、コンサルタントに見直しを依頼してみるのもいいでしょう。