【検討企業必見】ISO14001認証の取得方法や流れは?わかりやすく解説!

ISO 2025.06.02

「ISO14001認証を取得したいけど、どこから手を付ければいいのか分からない…」とお悩みではありませんか?

環境問題への関心が高まる中、ISO14001認証は企業利益や競争力を向上させる重要な手段のひとつです。ただし、初めて取り組む場合、認証取得までの流れや準備すべきポイントが多く、取得が難しく感じられるかもしれません。

この記事では、認証取得までの流れや具体的な準備方法、取得費用、取得のメリット・デメリット、初回審査のスケジュール概要など、ISO14001認証取得に関係するトピックを幅広く取り揃えています。ぜひ本記事を参考にして、スムーズなISO14001認証取得を目指しましょう!

ISO14001認証取得までにかかる時間

 
ISO14001認証の取得期間は、企業の規模や業務プロセスの成熟度によって異なります。一般的に、小規模企業は6~9か月、中規模以上の企業は約1年かかることが多いです。

これまでの流れとして、EMSの構築・運用に3~6ヶ月、内部監査とマネジメントレビューに1~2ヶ月、認証審査に1~2ヶ月を要します

ISO14001認証取得までの流れ【構築~認証書取得まで】

ISO14001の構築~運用~認証取得までの流れは以下の通りです。

構築 1. 計画をたてる ISO14001を取得する目的・取得予定日、適用範囲を明確にする
2. マネジメントシステムの構築 環境方針・環境目標・環境マニュアル・手順書等の作成
運用 3. マネジメントシステムの運用 環境計画の実行・運用記録作成
4. 内部監査の実施 内部監査員に選定された社員が監査
5. マネジメントレビューの実施 経営者などへ報告・指示を受ける
審査 6. 第一段階審査 マネジメントシステムを3ヵ月~半年程度運用後、第三者認証機関から審査を受ける
文書類の書類審査(構築面での審査)
7.第二段階審査 現場審査(運用面での審査)
8. 審査で不適合とされた場合のマネジメントシステムの再構築 不適合とされた原因を追及し、修正を行う
認証書取得 9. 審査判定 審査員に環境マネジメントシステムが規格の要求事項に適合していると判定されれば、合格 審査後1ヵ月程度で認証書が発行される

認証書を受け取った後は、ISO14001規格の要求事項への適合を公式に宣言できるので、名刺やホームページにISO14001認証機関のロゴを入れることが可能です。
 

ISO14001審査を受けるための準備とは

ISO14001の審査を受けるためには、環境マネジメントシステムの構築(計画)・運用・評価・改善のサイクルを1周回さなければなりません

また、環境マネジメントシステムは規格の要求事項に適合したものでなければならないため、審査では客観的判断のために必要なルールの文書化や運用の記録、管理などを確認し、合否を決めます

中でもISO14001特有の要求事項については確実に準備をすることが重要です。

ISO14001要求事項を満たす5つのポイント

ISO14001は、10項目の要求事項から構成されており、各要求事項を満たすような仕組みを構築する必要があります。

ISO14001要求事項を満たすポイントは主に以下の5つが挙げられます。

  • 環境方針を立てよう
  • 環境目標を策定しよう
  • 環境側面を特定しよう
  • 順守義務の特定、それに対する順守評価をしよう
  • 緊急事態への取組み

それでは、各ポイントについて解説していきます。

環境方針を立てよう

トップマネジメントは環境に関する企業活動の方向性を示した環境方針を決め、正式に表明しなければなりません。環境方針では文書化を求められており、企業の価値観、行動指針や法令順守を明確にし、企業の全体的な環境戦略の基盤となるように方針を策定しましょう。

また、環境方針には以下のコミットメント(責任を持った約束)を含むようにと要求事項では求められています。

  • 目標の枠組み
  • 汚染の予防
  • 環境保護
  • 順守義務
  • 環境マネジメントシステムの継続的改善

環境目標を策定しよう

ISO14001規格要求事項では、環境目標を文書化して策定するように要求されています。

環境目標は環境方針に基づき達成・未達が明確に判定できるよう設定し、目標を達成する為の取組みの計画を策定します。事業活動上発生するリスク及び機会(環境側面や法的要求事項をを含む)を考慮した内容になっているかも重要です。

環境目標を達成するための取組みの計画には、以下の5つを考慮しなければなりません。

  • 実施事項
  • 必要な資源
  • 責任者
  • 達成期限
  • 結果の評価方法

環境側面を特定しよう

ライフサイクルの視点を考慮して、組織の活動や製品およびサービスに影響を及ぼす環境側面、環境影響を特定します。

また、その中でも事業活動上で重要な環境側面である『著しい環境側面』を特定するための評価基準も設けなければなりません。環境側面に関する要求事項において、文書化して残すようにとも要求されています。

環境側面の具体的な例としては、以下のものが挙げられます。

良い影響 悪い影響
環境配慮型商品の購入
裏紙の使用
廃棄物のリサイクル
環境ボランティア活動
自動車の排出ガス抑制への取組み
火災・自然災害による環境悪化
騒音・振動・粉塵
悪臭
汚水の排出

順守義務の特定、それに対する順守評価をしよう

ISO14001には法的要求事項があり、組織の環境側面に関する環境法令を特定し、順守状況を適切な頻度・タイミングで確認するようにしなければなりません。また、文書化して残さなければならないため、環境関連法令一覧を作成した方が良いでしょう。

また、順守評価を実施する際、順守状況に関する適切な知識と理解が必要となります。

順守評価の結果、法的要求事項が満たされていないことが判明したら、法的要求事項を満たすために必要な処置を行わなければなりません。

緊急事態への取り組み

環境側面の特定、またそこから特に組織とって多大な影響を与えうる環境側面である”著しい環境側面”を決定します。

また、”緊急事態”に該当する環境側面は、”著しい環境側面”として組織が重点的に管理することが望ましいでしょう。

”緊急事態”とは、環境や生命など危険が差し迫っている、重大な事態のことをいいます。

緊急事態の例として、一般的には以下のようなものが挙げられます。

  • 火災
  • 油類漏洩などによる水質汚染
  • 化学物質の漏洩
  • 自然災害
  • 人為災害
  • 交通事故

”緊急事態”に該当する”著しい環境側面”は、緊急事態発生時の環境影響を緩和するために、対応方法についての手順書などを作成し、文書化することを求められています。

また、緊急事態発生時に計画通りに実施できるか、現状の対策で問題ないかを確認するための訓練を定期的に実施しなければなりません。訓練(テスト)記録を残し、変更の必要があれば手順書の改訂を行います。

審査までにやるべきこと【構築・運用】

ISO14001認証受審までの準備段階に当たる、環境マネジメントシステムの構築・運用の流れを説明します。

1)環境方針・環境目標の作成
環境方針:環境に関する企業活動の方向性を示します。
環境目標:環境方針と整合性の取れた具体的かつ定量的に設定します。

2)マネジメントシステムの構築
 規格要求事項を満たしているか、業務上のルールの確認を行います。
→業務プロセスや部門別の役割などについて明文化する(環境マニュアル、手順書)
→組織の経営に基づく環境対策の方向性や目標の決定(環境方針、環境目標、現状分析)

3)帳票整備
必要な帳票の作成、データ更新の管理を行い、適切な保管方法を決定します。

4)マネジメントシステムの運用
環境目標の達成を確実化する環境計画を実行し、そのうえでマネジメントシステムを運用し、運用の記録や検証の結果を残します。

5)内部監査
内部監査では、被監査部門の第三者である内部監査員によりマネジメントシステムの適合性と有効性を評価します。内部監査員に選任される人は、規格要求事項や会社のルールで規定された内部監査員としての力量を持っている社内外の人物でなければなりません。

6)マネジメントレビュー
マネジメントレビューとは、所謂トップマネジメントへのマネジメントシステムについての報告会です。マネジメントレビューでは、経営層は定期的にマネジメントシステムが適切で過不足なく機能しているか、かつ有効性はあったか、目指す方向性は一致しているかの確認をしないといけません。

マネジメントレビューにおけるインプット情報やアウトプット情報について、規格の要求事項に規定されており、詳細は次の記事『ISO14001:2015の要求事項とは?運用のポイントも含め分かりやすく解説』で確認できます。また、マネジメントレビューの記録についても残しておくようにしましょう。

7)是正処置
マネジメントシステムを運用するうえで、不適合が発生した場合は、修正・処置を行います。

“不適合”とは、要求事項(社内ルール、規格、法規制、顧客要求)を満たしていないことを指します。発生した不適合を調査し、再発の可能性、過去の類似の問題が発生しているかを考慮し、原因除去のための処置の必要性を評価します。その結果、再発防止の必要性があれば、是正処置を行います。

不適合の内容やそれに対する処置と是正処置の結果については、文書化し記録を残す必要があります。

ISO14001認証取得にかかる費用

ISO14001取得にかかる費用の目安は、総計すると以下の通りです。(従業員数30名以下を想定)

  • 自社運用の場合…30~100万程度(人件費は含まず審査費用のみ)
  • コンサル利用の場合…75~300万円程度

また、各費用の詳細を以下の表にまとめています。

費用/運用方法 自社運用 コンサル利用
審査費用 ・審査料(審査を受けるための費用)目安として30~100万程度
・ISO登録料(ISO14001登録手続きにかかる費用)
・審査員の交通費・宿泊費(ISO審査機関から自社までの交通費・宿泊費)
人件費
(ISO業務に携わる時間に対する費用)
例:1名×30万円(月給)×12ヵ月=360万円 ・ISO知識の習得にかかる時間数は削減可能
・支援構築・運用の資料作成など支援を受けることで人件費を抑えることが可能
コンサル費 不要 ・コンサル依頼料(取得するまでの費用)
年間で40~110万円程度
諸経費 ・要求事項解説本やマニュアルテンプレート購入など
・環境法令順守や環境対策のための準備費用がかかる可能性あり
・環境法令順守や環境対策のための準備費用がかかる可能性あり

ISO14001取得のメリット・デメリットとは

メリット デメリット
・環境リスク(事故・緊急事態)の回避・低減
・業務改善により効率化や生産性の向上 コスト削減
・従業員の環境に対する意識やモチベーション向上
・企業体質の強化が図られる
・最新法令や改訂法令の情報収集が大変
・運用・維持のための工数がかかる
・他の規格に比べて改善効果が実感しにくい
・審査費用がかかる

ISO14001取得のメリット

ISO14001認証取得により得られるメリットについては以下が挙げられます。

  • 環境リスク(事故・緊急事態)の回避・低減
    環境事故や緊急事態に直結するような環境リスクを防ぐための管理対策の仕組みを作ることでリスクの低減に効果的です。
  • 業務改善により効率化や生産性の向上
    ISO14001を導入する過程によって、業務の見直しを行い、無駄な業務や手順を無くすことで生産性向上に繋がります。業務手順や従業員の教育方法の標準化などが進められ、業務効率化が図られます。
  • コスト削減
    業務全体の流れの中で環境への影響を考え、省資源に取り組むことでコスト削減に繋がります。
  • 従業員の環境に対する意識やモチベーション向上
    企業がISO14001を導入することで、環境問題への意識が共有され、従業員の環境に対する意識が高まります。また、企業が環境保全に取り組むなど社会的責任を果たすことで、働く上でのモチベーション向上にも繋がります。
  • 企業体質の強化が図られる
    環境に配慮した会社であると評価されることで、取引先の増加や継続などにつながり、収益の増加に効果的です。ISO14001を導入することで、組織の役割権限や力量の明確化、作業の標準化などが実現でき、組織の強化に効果的です。

ISO14001取得のデメリット

一方で以下のようなデメリットも発生します。

  • 最新法令や改訂法令の情報収集が大変
    法規制は不定期に施行・改訂されるため、定期的に最新情報を収集する必要があり、事業上関連する法令全てを把握するには多大な労力がかかります。
  • 運用・維持のための工数がかかる
    認証維持のためには毎年審査を受ける必要があり、審査に向けた書類作成や準備に担当者の時間を割かなければなりません。また、ISO関係の書類作成・記録の管理などが通常業務に追加されることで、従業員への負担が大きくなってしまいます。
  • 他の規格に比べて改善効果が実感しにくい
    品質のISO9001では製品などの品質向上が目に見えて分かりやすいですが、環境のISO14001では、紙、ゴミ、電気などの節約のみに留まる傾向があり、環境活動に貢献できているかが分かりづらいという特徴があります。
  • 審査費用がかかる
    ISO14001認証の取得にかかる費用には、審査料・ISO登録料・審査員の交通費・宿泊費などがあります。また、取得後も毎年の維持審査・更新審査に費用がかかります。

ISO14001認証の取得には多くのメリットがあります。環境リスクの軽減や業務の効率化、コスト削減に加え、従業員の意識向上にも貢献します。一方でデメリットとして、法令の情報収集や運用・維持に時間と労力が必要であり、審査費用の負担も発生します。

このようなメリットとデメリットを踏まえ、ISO14001認証を取得した方が有益かを社内で検討することが重要です。

ISO14001の取得方法は2パターンある

ISO14001の取得方法には、大きく分けて「自社で構築・運用する方法」「外部コンサルタントに依頼する方法」があります。企業が確保できる人的支援や予算、知識レベルに応じて、最適な方法を選ぶことが重要です。

自社での構築・運用

自社でISO14001を取得する場合、環境マネジメントシステムの構築から運用、審査対応までを社内で行います。

メリットは、コストを抑えられ、社内に専門知識が確保されることです。一方、ISO14001の知識やノウハウが不足している場合、構築に時間がかかり、負担が大きくなる可能性があります。

自社構築・運用のメリット 自社構築・運用のデメリット
・費用が最低限で抑えられる。
・社内にISOの専門知識が蓄えられる。
・ISOのための書類作成や運用を行ってしまうリスクが高く、余計な書類の増加や管理の複雑化につながりやすい。
・社内でのリソースを使用するため、ISOのために労力や時間が大幅にとられる。

外部コンサルタントに依頼し、構築・運用

ISO14001を取得する場合、外部コンサルタントに依頼する方法もあります。この方法では、専門家の支援を受けながら環境マネジメントシステムを構築し、運用を進めていきます。

外部コンサル運用のメリット 外部コンサル運用のデメリット
・専門家の指導・支援により、規格の理解や運用の負担を軽減できる
・企業の状況に応じた最適なEMSの整備ができる。
・審査に向けた準備や書類作成の指導を受け、確実な認証取得が望める。
・依頼費用が掛かる。
・コンサル業者選びに失敗すると、運用の負担が大きくなる恐れがある。

このように外部コンサルタントに依頼するともちろん費用が発生しますが、受けられるメリットは非常に大きいです。

ISOに対する知見が豊富なコンサルタントに依頼することで、企業に適したマネジメントシステムの構築が実現でき、スムーズなISO14001認証の取得が可能となります。

費用面では、自社運用の方が安くなります。しかし、時間や労力を含めたコストパフォーマンス目線で考えてみると、コンサルタントに依頼した方が確実に評価が高くなるでしょう。
⇒ISO14001における自社運用とコンサルタント導入の費用比較に関する詳細は、次の記事参照『ISO14001の新規取得・維持費用はどれくらい?コンサル会社利用のパターンまで徹底解説!』

ISO14001初回審査のスケジュール例

ISO14001の初回審査は2回に分けて実施されます。

  • 第一段階審査(一次審査)…文書審査(ISOのマネジメントシステムの構築についての審査)
  • 第二段階審査(二次審査)…現地審査(ISOのマネジメントシステムの運用についての審査)

それでは、各段階での審査の当日の流れを見ていきましょう。

【例)第一段階審査のスケジュール】(1日ほどで完了)

・01.オープニング会議
…審査員と会社側のメンバー紹介、審査の目的や基準、指摘区分の説明(不適合など)、範囲、スケジュールなどを確認します。

・02.トップインタビュー
…社長や取締役などの経営層が参加。近年の経営状況、外部・内部の課題と利害関係者からの期待、事業計画と達成状況、目標の達成状況などのヒアリングを行います。

・03.文書審査
…ISO14001の要求事項に基づき、文書や記録が適切かを審査します。主にISOメインのシステム文書の確認になります。文書の最新版管理に基づき、関連する組織での対応状況も場合によっては同時に行われる事もあります。

・04.現地審査
…現場の状況を確認し、ISO14001のマネジメントシステムの運用状況や法規制の順守状況などを審査します。

・05.最終会議
…当日の審査結果の概要説明と、指摘事項があれば指摘が出されます。

【例)第二段階審査のスケジュール】(1~2日ほどで完了)

・01.オープニング会議
…第一段階審査で不適合があった際は是正の確認、ほか当日のスケジュールを確認します。

・02.各部門別審査
…各部署の責任者や担当者に対して、業務における環境マネジメントシステムの運用状況を確認します。

・03.現地審査
…現場の状況を確認し、ISO14001のマネジメントシステムの運用状況や法規制の順守状況などを審査します。

・04.審査結果まとめ
…審査員が最終的な審査のまとめを行います。 この時は、審査員のみで行われますので組織の担当者は指定された時間まで待機する事になります。

05.最終会議
…審査結果の総括と、指摘事項があれば指摘についての報告を受けます。 ここで問題なく認証が継続できるか、指摘事項に対しての是正について説明が行われます。

まとめ

この記事ではISO14001認証取得の具体的な流れや初回審査のスケジュールなどについて解説しました。

近年、環境への取組みが重視されるようになり、ISO14001の必要性が高まっています。

環境マネジメントシステムの構築・運用には、様々な段階があり、自社で取得を考えると通常業務にISO業務が追加されることで大きな負担がかかります。

ISOの専門であるコンサルタントへ依頼することで、自社にあった環境マネジメントシステムの構築を提案してもらうことができます。

また、運用の支援を受けることでスムーズに認証を取得することができるでしょう。