建設業における施工管理と安全管理について徹底解説

施工管理をする上で、最も重要になるのが安全管理。実は安全管理は施工管理の中の一つの業務です。しかし、建設業の施工管理や安全管理をするには具体的に何をすればいいのかわからない人も多いでしょう。
そこでこの記事では、施工管理の安全管理について、建設業に携わって20年の技術者がわかりやすく解説していきます。安全管理の具体例や施工管理技士の資格、どんな能力が必要かなどを詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事で分かること
- 施工管理の安全管理と
- 安全管理の業務内容
- 安全管理の業務に必要な資格(土木施工管理技士など)
- 安全管理に必要な能力
目次
施工管理の安全管理とは?
施工管理には、4つの重要な管理(工程管理・品質管理・原価管理・安全管理)があります。そのうちのひとつが安全管理です。

ここでは、施工管理と安全管理の概要を解説します。
そもそも施工管理とは
施工管理は工事の現場が計画通りに進んでいるかをチェックし、品質の良いものを製作できるように管理することです。
- 工事全体を把握して管理すること
- 工程管理・品質管理・原価管理・安全管理の4つを合わせたもの
そのためには、工事の進捗確認、より良い品質の確保、ムダのない費用算出、安全に配慮した現場など、工事全体を把握しなければなりません。
安全管理は施工管理の中の一つ
安全管理は、施工管理の4大重要管理項目の一つです。
工程管理:工事の着工から竣工までの工程表を作成して、日々の進捗状況を管理します。雨が降って作業ができない日や、業者の手配がつかないなどのトラブルにも対処し、工事をスムーズに進めていけるよう管理します。
品質管理:設計図書や施工計画書の通りに施工されているかを管理します。作業ごとに品質の試験や出来形の検査を行い、規定された品質を満たしているか確認します。協力業者(下請業者)が行う作業を管理し、間違った作業をしていないかチェックします。
原価管理:材料費や人件費を算出し、利益がでるように費用を管理します。良い品質のものをコストを抑えて施工するために、どこにムダがあるかを洗い出すシビアな面も必要です。
安全管理:作業員が現場で安全に仕事できるように管理します。朝礼での危険予知活動・安全ミーティング、日々の安全巡視、毎月の安全パトロールなど、安全管理は幅広く行われます。無事故無災害を目標にひとりひとりの安全に対する心がけが大切です。
この4つの中でも特に重要なのが安全管理です。
工事の現場は、建設機械を扱ったり高所での作業など危険が潜んでることが多く、ケガや死亡事故が発生する恐れがあります。着工から竣工まで作業員の命と健康を守り、無事故で工事を終えるために安全管理を徹底しなければなりません。
また、近隣住民の生活や健康に悪影響を及ぼす、騒音・振動・粉じんなどにも配慮が必要です。現場の状況を常に把握し、安全を確保することが安全管理のポイントです。
安全管理の業務内容
施工管理における安全管理の業務内容は、以下の通りです。
- 使用機械や設備・器具の安全点検
- 工法や手順のチェック
- 現場の安全パトロールを実施
- 作業員の健康管理
- 危険予知運動
- 現場関係者への安全管理教育
- ヒヤリハットの共有
- 5S活動
使用機械や設備・器具の安全点検
作業開始前に機械が正常に作動するかを点検します。また、足場や手すりなどの設備に異常がないかなども確認します。ヘルメットや安全帯の点検も忘れずに行いましょう。
工法や手順のチェック
施工計画書や図面に基づいた工法を行っているか、労働災害防止に配慮した作業手順書に則り作業を行っているかを確認します。
現場の安全パトロールを実施
午前と午後に工事現場を見回りをして危険な箇所がないかをパトロールします。問題があれば早期に改善して安全を確保します。
作業員の健康管理
作業員の健康状態を把握し、体調不良によるヒューマンエラーの予防を行います。
危険予知運動
作業開始前に作業中の危険性を洗い出します。作業員の危険への対策を考え、事故防止に努めます。
現場関係者への安全管理教育
新規入場者だけでなく、ベテラン作業員にも危険への認識を高めるための安全教育を行います。現場全体で安全意識の向上を図ります。
ヒヤリハットの共有
ヒヤリハットの報告をもとに作業員に事例を周知します。事例から改善策を立て、現場全体で共有します。
5S活動
整理・整頓・清掃・清潔・しつけを徹底します。現場をきれいに整えることで、転倒の予防や生産性の向上に繋げます。
安全管理の業務に必要な資格
施工管理における安全管理の業務に必要な資格はありません。しかし、安全管理は施工管理の中でも重要な業務です。作業員や近隣住民を危険に巻き込むことがあってはなりません。
安全管理を行うには専門知識や高いスキルが必要であり、それを証明するには資格が欠かせないのも事実です。
施工管理技士の資格が必要
そのため、安全管理において必要な資格は「施工管理技士」が一般的といえるでしょう。また、工事の主任技術者や監理技術者になるためにも「施工管理技士」の資格は必要です。
「施工管理技士」は、施工管理の安全管理に関する知識や技術を証明するものです。業種ごとに7種類に分かれています。
- 建築施工管理技士
- 土木施工管理技士
- 電気工事施工管理技士
- 管工事施工管理技士
- 電気通信工事施工管理技士
- 建設機械施工管理技士
- 造園施工管理技士
資格には1級と2級があり、それぞれ業務範囲が異なります。試験は学科試験と実地試験に分かれています。まずは実務経験を積んで、2級の資格取得を目指しましょう。
そして将来的には、1級の資格取得を目標に精進しましょう。
安全管理に必要な能力
作業員の命を預かる現場では、安全管理の幅広い知識・臨機応変に対応する力が求められます。
ここでは、施工管理の安全管理に必要な能力を3つ紹介します。
1. 危機管理能力
2. 問題解決能力
3. コミュニケーション能力
1.危機管理能力
建設現場では、予想できない事態(事故やトラブル)が起こります。事故やトラブルが起きた際に迅速かつ冷静に対応し、被害を最小限に留める高い危機管理能力が必要です。
具体的には、つまずきそうな足場や重機の不備を見つける注意力、事故が起こった時の初期対応や迅速力などです。危機管理能力は現場で経験を積むことで養われていきます。
現場全体に気を配り、違和感を感じたら安全確認を行い、様々な事態に対応できるよう準備しておきましょう。
2.問題解決能力
建設現場では作業員の事故・資材の納品遅延・自然災害・近隣住民からの苦情など、さまざまなトラブルに見舞われます。発生したトラブルに適切で迅速に対応する問題解決能力は不可欠です。
トラブルの原因がどこにあるかを突き止め、対策を考えて実施し、問題解決していきます。そして同じトラブルを再発させないよう防止策を考えることが重要です。
その積み重ねが、現場全体の安全確保に繋がっていきます。
3.コミュニケーション能力
建設現場では作業員、発注者、会社の上司、関連会社など、多くの人と関わります。現場の関係者と信頼関係を築くことができればチームワークが向上し、スムーズな作業に繋がっていきます。
例えば、毎日作業員と会話することで、困っていることや体調の変化に気付くことができます。また、発注者との何気ない雑談で、安全に対して相手の意図していることや創意工夫のヒントがもらえたりします。
年齢・性別・経験値など、異なる人が混在している現場では、どんな人とも積極的にコミュニケーションをとる能力は欠かせません。
まとめ
安全管理は、施工管理のなかで最も重要です。
施工管理における安全管理は、近隣住民や作業員の命と健康を守る重要な業務です。危険が潜んでいる工事現場では、重大な事故を起こさないよう徹底した安全管理が求められます。
着工から竣工まで安全に工事を遂行するには、コミュニケーション能力が必要です。作業員と信頼関係を構築し、現場全体が安心とやりがいを持って働ける職場環境を実現させることが安全管理につながります。
また、施工管理技士は2級から受験できるので、安全管理の知識を深め学科試験の合格、そして実務経験を重ねてさらに安全管理への知識を成熟させ、実地試験に臨みましょう。
資格取得を目標に、自分にもやりがいを持たせましょう!