建設業でISO45001は取得した方がいい?理由やメリットなど簡単に解説!

建設業は労働災害のリスクが高い業界であるため、安全管理は非常に重要です。
そんな中、国際規格である「ISO45001」の導入は、安全管理に有効な手段として認識されています。ISO45001は、労働者の安全と健康を守るためのマネジメントシステムです。ISO45001の導入により、事業活動上生じる労働安全衛生を体系的に管理し、改善につなげることができます。
では、建設業者におけるISO45001取得のメリットは、他にはどのようなものがあるのでしょうか。そこでこの記事では、建設業がISO45001を取得する理由やメリット・デメリットなどについて簡単に解説していきます。建設業でISO45001の導入を検討している企業は、ぜひ参考にしてください。
目次
ISO45001とは?建設業でISO45001を取得する理由についても解説
ISO45001は「労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)」に関する国際規格です。
建設現場では高所作業や重機接触など危険が多く見られます。ISO45001の目的は、このような労働安全衛生リスクを洗い出し、対策を講じ、従業員が安心・安全に働くことが可能な労働環境へと改善することです。

ISO45001の取得により、作業手順の標準化や従業員教育、定期的なリスクアセスメントを実施し、労働災害の対策を強化します。また、安全管理を国際規格に則った基準で徹底することで、コンプライアンスや安全意識の向上、取引先や顧客からのイメージ向上にもつながります。
自治体や工種によっては、入札条件に入れているケースもあるため、建設業におけるISO45001導入のメリットは多岐にわたります。
建設業でのISO45001の取得企業数は?
2023年時点、世界各国のISO45001取得状況において、日本の取得件数は1915件という結果が出ています。ISO9001の取得件数と比べれば圧倒的に少ないのですが、驚くことに、国内の産業分類別のISO45001取得割合をみると全体の40%を建設業が占めているのです。
参考資料:国際標準化機構WEBページ ISO調査2023の結果


建設業においてISO45001取得で発生するメリット・デメリット
建設業においてISO45001取得で享受できるメリットや発生するデメリットは以下の通りです。
メリット
デメリット
1. 安全衛生管理の強化
2. 従業員の負傷・疾病を防ぐ
3. 組織運営の効率化と改善
4. 企業イメージと信頼性の向上
5. 競争力の強化1. 認証取得・維持にかかるコスト
2. 文書管理の手間がかかる
3. 審査対応の負担
メリット
建設業がISO45001認証を取得する各メリットの詳細は以下の通りです。
- 安全衛生管理の強化
ISO45001認証を取得するには、企業は労働安全衛生に関する方針を明確化する必要があります。これにより、全社的に統一された指針のもとで安全衛生を行う管理体制が整備されます。
安全衛生に対する取り組みが組織全体で共有されるため、従業員の意識も向上し、安全で健康的な職場環境の推進が可能となります。 - 従業員の負傷・疾病を防ぐ
ISO45001を導入することで、労働災害のリスクを軽減し、従業員の負傷や疾病を防ぐことができます。
ISO45001マネジメントシステムを運用する中で、リスクアセスメントを実施し、職場の危険源を特定し、定期的なPDCAサイクルに基づく改善活動を行うことで、継続的な職場の安全衛生向上が見込めます。 - 組織運営の効率化と改善
ISO45001の認証取得に向けた取り組みは、組織運営における効率化を促進します。ISO45001では従業員全員が安全衛生に配慮する観点で、組織内の役割や責任が明確化されます。
それに伴い、従業員それぞれが明確な責任意識をもって業務を行うことができ、業務の効率化や改善につながります。 - 企業イメージと信頼性の向上
国際規格であるISO45001を取得することで、企業は社会的に安全で健康的な職場環境を提供していることを証明できます。また、ISO45001では働く人の参加と協議が求められるため、従業員満足度向上にもつながりやすいです。
取引先や顧客に対しても、信頼性の高い企業としてアピールでき、新たな取引先の獲得や経路拡大にも有利に働くでしょう。 - 競争力の強化
ISO45001規格は他の一般的なISO規格(ISO9001、ISO14001)に比べて取得企業数が少ないため、取得することで同業他社との差別化につながり、業界内での競争力が増します。
デメリット
ISO45001の取得には多くのメリットがありますが、その反面デメリットもあります。デメリットの詳細は以下の通りです。
- 認証取得・維持にかかるコスト
ISO45001の認証取得には初期費用だけでなく、維持するにも費用が発生します。ISO45001にかかる費用には審査料金や、外部コンサルタント費用、さらに内部担当者の人件費などがあります。
これらの費用に対して、得られるメリットが見合うかどうかの判断が重要です。 - 文書管理の手間がかかる
ISO45001の構築・運用では、マニュアルや記録の作成、保管、更新が定期的に必要となり、文書類の管理責任者を決める必要もあります。このISO関連の業務は、多くの時間と労力を費やすため、通常業務を圧迫し、負担が増加します。 - 審査対応の負担
ISO45001の認証維持には毎年審査を受ける必要があり、それに伴い、事前準備もしなければなりません。審査は組織の規模に応じて数日かかる場合があり、関係者の日程調整も必要です。
また、審査で不適合が出た場合は、それに対するフォローも必要になるため、ISOと通常業務を兼任している担当者にとっては負担がかかります。
【ISO45001特有】審査で確認される書類作成のポイント
ISO45001認証取得のためには、規格要求事項の理解が必要です。その中でも、特にISO45001で抑えておくべきポイントは以下の3つです。
- 危険源の特定と除去のためのリスク及び機会の評価や取り組み
- 労働安全衛生関連の法令順守状況
- インシデントの管理
→ISO45001要求事項の詳しい解説については、次の記事を参照:ISO45001:2018の要求事項とは?運用のポイントも含め分かりやすく解説
危険源の特定と除去のためのリスク及び機会の評価や取り組み
まず、事業活動上発生する危険源(リスクの原因になるもの)やリスク(負傷や疾病)を特定します。
そして、特定した危険源やリスクに対して、評価基準を設けなければなりません。スタンダードなリスク評価方法は、「発生する可能性×発生した時の重篤度」です。また、規格では、既存の管理策の有効性も考慮してリスク評価をするように求められています。
こういったリスクアセスメントの流れは、
- 作業別にリスクの洗い出し
- すでに実施している災害防止対策とその上でのリスク評価
- 追加のリスク低減措置案と措置後のリスク評価
の順番で実施すると良いでしょう。
この要求事項に関しては、文書化して残すようにとも要求されています。『リスクアセスメント表』のテンプレートはWEB上で無料ダウンロードができるものもありますので、ぜひ参考にしてみてください。
労働安全衛生関連の法令順守状況
組織の危険源や労働安全衛生に関する法令を特定し、順守状況を定期的に確認するようにしなければなりません。また、文書化して残すようにとも要求されています。
建設業で該当する法令を調べる時は、まず国土交通省が発行している『共通仕様書』を確認したら良いでしょう。
共通仕様書に法令の遵守に関する項目がありますので、その中から労働安全衛生法令かつ組織の業務上関係しそうな法令を特定し、内容を法令関係の解説サイトや解説本などで確認していきます。建設業協会などでも法改正に関する情報を入手できます。
インシデントの管理
『インシデント』とは、発生した事故、ヒヤリハット的な事象、ヒヤリハットまでも行かないミスも含めた、問題事象のことです。
インシデントが発生した際は、直ちに修正するための処置や起こった結果への対処を行わなければなりません。また、インシデントの内容や発生原因、過去に同じようなインシデントが発生したことがあるか、または再発する可能性があるかを考慮し、是正処置の必要性を判断するよう求められています。
このようなインシデントの情報は、記録に残すように要求事項で求められており、関係者にも周知を行うことが重要です。
まとめ
ISO45001は、入札条件に入れている自治体も少ないため、ISO9001やISO14001のようなポピュラーな規格と比べ取得件数が少ないというのが現状です。しかし、ISO45001こそ労働災害リスクの高い建設業にとって、重要な規格であることが理解できたのではないでしょうか。
ISO45001の審査では労働安全衛生リスクだけに着目するのではなく、労働安全衛生リスクを体系的に管理する仕組み自体の評価をされます。
従業員一人一人が主体となって、危険源の特定やリスク低減の対策を講じることによって、安全で健康的な職場環境づくりが実現できるでしょう。