【テンプレートあり】アルコールチェック記録簿の書き方や具体的な流れを紹介

法令 2025.06.02

2022年4月1日、道路交通法施行規則の一部改正により、車両乗車前のアルコールチェックと記録簿の保存が法的要件となりました。この法改正への対応について、「具体的な記録簿のフォーマットを確認したい」「正しい記録方法について知りたい」「自社の業務フローに合った記録簿を作成したい」という方も多いのではないでしょうか。

  • 具体的な記録簿のフォーマットを確認したい
  • 正しい記録方法について知りたい
  • 自社の業務フローに合った記録簿を作成したい

本記事では、このような課題を解決するため、以下の内容を詳しく解説します。

  • アルコールチェックの具体的な実施手順
  • 記録簿への必要記載事項
  • 義務化の背景と対象企業
  • 実務での運用のポイント

また、すぐに活用できる記録簿のテンプレートを無料でご用意しております。法令要件を満たしたテンプレートとなっていますので、ぜひダウンロードしてご利用ください。

アルコールチェックは義務化

2022年4月1日より、事業用自動車(トラック、バス、タクシー等)の運転者に対するアルコールチェックが全面的に義務化されました。

改正道路運送法では、運行管理者は運転者の乗務前後にアルコール検知器を使用し酒気帯びの有無を確認することが必須となっています。この義務化により、飲酒運転による重大事故を未然に防ぐことが期待されています。

義務化の背景

アルコールチェック義務化の背景として、千葉県八街市で発生した痛ましい事故がきっかけとなっています。2021年6月、下校中の小学生の列に飲酒運転のトラックが突っ込み、尊い命が失われる事故が発生しました。

この事故を重く見た政府は、2021年11月に内閣府令を交付しました。その後パブリックコメントを経て道路交通法施行規則が改正され、より厳格な飲酒運転防止策が整備されました。

義務化の対象企業

アルコールチェック義務化の対象となるのは、以下のいずれかの条件を満たす企業となります。

1. 乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用している事業所

2. その他の自動車を5台以上使用している事業所

出典:e-Gov法令検索「道路交通法第七十四条の三

注意すべき点として、この義務化は車種や使用用途は問われていないということです。そのため、すべての車両が軽自動車(黄色ナンバー)であっても、5台以上使用していれば対象となります。また、大型自動二輪車および普通自動二輪車については、それぞれ1台を0.5台として計算されます。

さらに、対象となる事業者は道路交通法の規定により「安全運転管理者」を選任する必要があります。安全運転管理者は、道路交通法施行規則第9条の10に基づき、アルコールチェックの実施と記録の管理を行わなければなりません。

これは以前からアルコールチェックが義務付けられていた運送会社のトラックやタクシーなどに加え、一般企業の社用車や送迎車などの「白ナンバー」車両にも適用される重要な安全管理措置となっています。

アルコールチェックの流れ

アルコールチェックの基本的な流れは以下の通りです。

1. 業務開始前
 ・安全運転管理者による運転者の健康状態の目視確認
   ・顔色のチェック
   ・アルコール臭の有無の確認
 ・運転者によるアルコール検知器での測定
 ・測定結果の記録簿への記入


2. 業務終了時
 ・安全運転管理者による運転者の状態確認
 ・運転者によるアルコール検知器での再測定
 ・測定結果の記録 ・記録簿の提出と確認
   ・安全運転管理者による内容の精査
   ・必要に応じて修正指示
 ・確認済み記録簿の保管(1年間)

アルコールチェックは、業務開始前と業務終了後の1日2回実施することが義務付けられています。車両の乗り降りの度に実施する必要はなく、必ずしも運転の直前・直後である必要もありません。そのため、出勤時と退勤時にチェックを実施している企業が多いです。

また、原則としてアルコールチェックは『安全運転管理者』の立会いのもと対面で実施する必要があります。ただし、直行直帰や出張などで対面での実施がむずかしい場合は「対面に準じた方法」での実施が認められています。その場合の具体的な対応方法として、以下のような選択肢があります。

  • 運転者に検知器を事前に携行させる(機器の不具合に備え、複数台持参)
  • 副安全運転管理者または業務補助者によるチェックの実施
  • カメラやテレビ電話などを活用した遠隔での声や顔色の確認

自社の業務形態に合ったやり方でアルコールチェックの実施を行いましょう。

アルコールチェック記録簿に必須の記載項目

アルコールチェック記録簿の様式に特別な定めはありませんが、以下の項目を必ず記載する必要があります。

1. 運転者情報
 運転者の氏名
 運転者が使用する車両の登録番号または識別可能な記号・番号


2. 確認者情報
 確認者(安全運転管理者または副安全運転管理者)の氏名


3. 確認状況
 確認の日時(日付、時間、曜日)
 確認方法(アルコール検知器の使用の有無)
 対面でない場合は具体的方法(例:スマートフォンによるテレビ電話)
 酒気帯びの有無(検知器使用時は数値も記録)
 指示事項(測定結果に基づく指示等)

さらに、安全運転管理を徹底するため、基本項目に加えて下記の項目も記録しておくといいでしょう。

  • 運転免許証の有効期限
  • 天候
  • 運転者の健康状態(睡眠時間や体調)

記録方法はExcelなどの電子データや、紙媒体での管理どちらでも問題ありません。実施頻度の少ない事業所では、Excelで作成した記録表に手書きで記入する方法が効率的です。

アルコールチェック記録簿のテンプレート・ひな形

アルコールチェック記録簿の保存義務化に伴い、適切な記録簿のひな形(テンプレート)を探している方も多いかと思います。ここでは、国土交通省や各都道府県の安全運転管理者協会が提供している無料テンプレートをご紹介いたします。それぞれの特徴を見ながら、自社に最適なテンプレートをダウンロード可能です。

提供元 特徴 形式
シビルウェブ 記入する内容が最低限で記入がラク Excel、PDF
国土交通省 基本となる記録簿 Excel
島根県安全運転管理者協会 少ない枚数で管理が可能 PDF、Excel
鹿児島県安全運転管理協議会 日付による管理がしやすい Excel
愛知県安全運転管理協議会 ドライバーごとの管理が可能 Excel
千葉県安全運転管理協会 車両ごとの管理がしやすい PDF、Excel

アルコールチェック記録簿の保存期間

アルコールチェック記録簿の保存期間は、作成日から1年間となっています。これは、道路交通法施行規則第9条の10により義務付けられています。アルコールチェック記録簿は、検査や監査の際に速やかに提示できるようにしなければなりません。そのため、適切な管理体制を整える必要があります。

アルコールチェック記録簿の保存方法

アルコールチェック記録簿の保存方法には、主に以下の2つの選択肢があります。それぞれのメリットデメリットがあるので自社に合った方法で保管しましょう。

保存方法 メリット デメリット
1. 紙媒体での保存 ・記入が比較的簡単
・バインダー等での管理が可能
・紛失や劣化のリスクあり
・保存期間経過後はシュレッダー等で確実に廃棄が必要
・保管場所が必要
2. クラウド型電子データでの保存 ・すぐに検索ができ、データ管理が簡単
・紛失のリスク軽減
・複数拠点からのアクセスが可能
・データのバックアップが容易
・物理的な保管場所が不要
・定期的なバックアップが必要
・フォルダの場所など運用ルールの明確化が必要
・誤ってデータを消去してしまうリスク

アルコールチェック記録簿は、万が一の事故発生時には責任所在の確認に不可欠な証拠となります。建設現場では、ダンプトラックやクレーン車など大型車両の運転が日常的に行われているため、事故が発生した場合の被害は甚大となる可能性があります。

日々のアルコールチェックの実施を確実に行うとともに保管も徹底するようにしましょう。

まとめ

今回は、アルコールチェック記録簿について『記載内容』や『保存方法』などについて解説しました。

建設現場では、大型車両の運転や重機の操作など、高度な注意力が必要な業務が多いため、アルコールチェック記録簿においても、より厳格な管理が求められます。工事車両による飲酒運転は、作業員や一般通行人の生命を脅かすだけでなく、現場の信頼性を大きく損なう恐れがあるでしょう。

また、記録簿の不適切な管理や記載漏れは安全運転管理者の業務違反となり、最悪の場合、公安委員会による解任処分につながる可能性もあります。

本記事で紹介したひな形を活用し、建設現場特有の勤務体系や車両運用に合わせた記録簿を使用することで、より確実な運用が可能になります。作業員ひとりひとりの安全意識向上と、現場全体での適切な取り組みが、事故のない建設現場の実現につながるのです。